慢性腎臓病(CKD)・腎機能障害

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、数年かけて腎臓の機能が低下し、タンパク尿や血尿など尿の異常も見られる病気です。CKDが悪化すると末期腎不全という状態になり、体内の老廃物や余分な水分が排出することができないため、透析療法という治療が必要になります。

慢性腎臓病とは簡潔にいうと、、、腎障害や腎機能の低下が3カ月以上続いている状態です!

一度悪くなってしまった腎臓の機能は、現在わかっているどの治療法を用いても完全に元の状態に戻すことはできません。そのため、腎臓が悪くならないような予防や、末期の状態に至る前に適切な治療を行うことで透析治療を免れる可能性が出てきます。

腎機能低下や蛋白尿がある方(下図の赤い部分の方)は、腎臓専門医による受診が推奨されています。

(引用:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018)

慢性腎臓病の原因

高血圧、糖尿病、多発性嚢胞腎、膠原病(全身性エリテマトーデス:ループス腎炎)、感染症など様々な要因にて腎機能は低下します。

高血圧(腎硬化症)

高血圧が長期に継続すると、腎臓が萎縮(小さくなる)することで、腎臓の機能が低下します。高血圧症による腎機能の低下は、糖尿病による腎機能低下と比較すると比較的ゆっくり進行します。尿所見異常も比較的軽度であることが多いです。

糖尿病(糖尿病性腎症)

腎機能の低下としては、最も多い原因です。糖尿病が原因の腎機能低下は、比較的進行が早く、腎機能が低下したことに気づいたときには、あっという間に末期になり透析治療などが必要になることが多いです。腎臓が悪くなる前にきちんと血糖管理をしていくことが、腎臓を保たせることに重要になります。

常染色体優性多発性嚢胞腎

遺伝性に腎臓に嚢胞(水の袋)が多発する病気です。この方は、親が同様の病気を持っていることが多いです。嚢胞自体はそこまで悪いものではないのですが、あまりに嚢胞が多いと、腎臓が圧迫されてしまい、腎臓の機能を正常に保てなくなってしまい、腎機能が低下します。常染色体優性多発性嚢胞腎の場合は、難病指定となっており、サムスカという尿をたくさん出させる薬を使うと腎機能低下が抑えられることがわかっています。

慢性腎臓病による症状

慢性腎臓病は初期では症状が出にくいですが、病気が末期の状態になると様々な症状が出現します。

  • 浮腫
  • 尿の異常(蛋白尿、尿潜血、尿量の減少)
  • 疲労感 – 手足や顔がむくむことがあり、特に足首や足が腫れやすくなります。
  • 食欲不振
  • 皮膚のかゆみ
  • 吐き気や嘔吐

・代謝性アシドーシス
腎機能が低下すると、体が酸性側に寄ります。

・貧血
腎臓は、血を作る機能(造血機能)を持っているため、腎臓の機能が低下すると、血が作れなくなり貧血になります。

治療

適切な食事

①蛋白制限
蛋白質を体内に取りすぎることによって、腎臓に負担がかかり、腎機能の低下が早まります。CKDグレードが3・4・5の方は、蛋白制限食を取り入れることで、腎機能の低下が予防できます。

②塩分制限
塩分を過剰摂取することで、高血圧症やむくみの原因となります。塩分を過剰に取りすぎないことも腎機能の低下を抑えることに繋がります。

③カリウム制限
カリウム自体が腎臓を悪くするということではなく、腎機能が低下している方は、適切にカリウムを尿から排出できなくなります。そのため、過剰にカリウムを摂取してしまうと、適切に体外に排出することができないため、体内にカリウムが溜まりやすくなります。カリウムが体内で過剰になると、致死的な不整脈になり、突然死につながる可能性があります。そのため、腎機能が低下している方は、カリウムのとりすぎには注意が必要です。カリウムが豊富な食べ物として、バナナやトマトが挙げられます。

運動

慢性腎臓病の方は、筋力低下が起きやすいと言われております(サルコペニア)。そのため、適度な運動をおこなうことで、腎臓機能の悪化を予防できる可能性がありますので、適度な運動をおすすめします。

早期の受診をお勧めする方

  • 検尿で蛋白が1+以上.
  • 検尿で潜血が1+以上.
  • 推算糸球体濾過量(eGFR)が60未満.
  • 腎機能が低下していると指摘された
  • クレアチニン(Cre)が高い(男性1.0ml/dl 女性 0.8mg/d 以上)

上記3つの項目のいずれか1つでも指摘をお受けになったことがある方は、慢性腎臓病の可能性があります。
慢性腎臓病は早期に発見し、早期に治療介入することで、今後の腎機能が低下するリスクが低くなる傾向が分かっています。

現在の慢性腎臓病患者は、CKD患者数は約1,330万人とされており、成人のおよそ8人に1人以上が慢性腎臓病(CKD)を持っており、新たな「国民病」と言われています。

お心当たりのある方、一度ご相談したい方は、お気軽に当院の腎臓内科専門医にご相談ください。

腎臓って言っても、今、症状は何もないし大丈夫かと・・

慢性腎臓病は、症状がほとんど出ないことが多いです。
検査を受けてみないと、腎臓が正常とは言い切れないのです。

東京都や調布市も、慢性腎臓病・CKDの方には、受診を積極的に推奨している疾患です。

治療

腎臓機能低下を完全に元に戻すような、治療薬は現在まだありません。
しかし、最近の研究結果によって、腎臓の機能低下を抑制できる、腎機能を改善することが出来る可能性がある薬が続々と出てきております。

①クレメジン
②ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
③SGLT2阻害薬(ex, フォシーガ)
④ARNI(アンジオテンシン受容体/ネプリライシン阻害薬)(ex, エンレスト)

貧血に対しては、造血を促す注射や内服薬を使用します。