性感染症

主に性行為を介してヒトからヒトへ直接病原体が伝播する感染症を、性感染症と総称し、その病原体は寄生虫、原虫、真菌、細菌、ウィルスと多種にわたっています。
性感染症にかかると、炎症部位にリンパ球(HIVが感染する細胞)が集まるため、HIVに感染する確率が高くなります。
以前は、淋疾(りんしつ)、梅毒、軟性下疳(げかん)、鼠経リンパ肉芽腫の4疾患だけが性病として取り扱われてきました。しかし、性行為によって伝播する可能性がある疾患には、他にも非淋菌性尿道炎、トリコモナス症、カンジダ症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、陰部伝染性軟属腫、後天性免疫不全症候群(AIDS:エイズ)と呼ばれるものがあり、それらをすべて含みSTIと呼びます。このうち、尿道炎以外のものは、皮膚科や婦人科領域で扱われることが多いです。

[性病の感染率]
端的に、症状が出ている・出ていないを問わず、性病感染者と性行為をしたとしても、必ず自身も感染するわけではありません。淋菌の場合は、1回の性行為で感染する確率は20~50%とされています。

淋菌

淋病はクラミジアと諸症状が似ています。淋菌と呼ばれる細菌が、性行為などで感染することで発症します。感染経路は、トイレや入浴など生活の共有部で感染することはほとんどありません。
淋菌感染は、男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎、膣炎をおこすことが多いです。男女共通では、咽頭淋病にかかるのが主となります。ほとんどの場合が、性的接触(性交、オーラルセックス)によって感染します。

淋菌の症状

男性は、排尿時の違和感や痛み、尿道の入り口から乳白色の膿といった分泌物が出ることがあります。尿道に感染すると、2~9日の潜伏期を経て、外尿道口の赤み、膿性分泌物の出現、排尿時の疼痛を訴えます。そのまま放置すると、上行性に精巣上体炎を起こし、陰嚢の腫大、局所の痛みを訴えるようになります。

女性の場合は無症状のことも少なくなく、おりものが増える程度の症状が多いです。一方で不正出血や下腹部を発症することもあり、放置すると子宮内膜症感染症などに悪化することもあります。男性に比べて、尿道が短いため尿道炎症状は乏しいため、自覚されないまま経過することが多いです。
しかし、場合によっては上行性に感染が拡大し、クラミジア感染とともに、骨盤内炎症(卵管炎、卵巣炎)に発展します。適切な治療をせずそのまま放置すると、卵管不妊症、子宮外妊娠を引き起こす恐れがあります。

咽頭や直腸の感染では、自覚症状がないことが多く、これらの部分も感染源となる。また、淋菌感染症は何度も感染することがあります。

排尿時の痛み、さらに発熱や倦怠感など、まともな生活がおくれないくらいきつい症状に襲われることもあります。

淋菌の検査

男性の淋菌性尿道炎の場合には、簡便かつ短時間で診断がつく検査方法として有用ですが、女性の子宮頸管炎の場合は、子宮頸管に他の細菌が存在するため診断がつきにくいとされています。
 近年、抗菌薬に対する耐性菌の出現が問題となっており、淋菌の薬剤感受性検査の重要性が増しています。検査には、淋菌の分離培養が必要となりますが、淋菌は死滅しやすいため、検体採取後、直ちに分離用培地に摂取する必要があります。
男性尿道分泌物や女性子宮頸管分泌物などを輸送する場合は、スチュアート培地を用いるなどの注意が必要です。
遺伝子診断法であるPCR法は検出感度が非常に高く、またクラミジアおよび淋菌を同時に検出できる核酸幅キット(TMA法、SDA法)も開発されています。

・グラム染色標本の顕微鏡検査(鏡検)
・分離培養法
・PCR法(核酸を増幅させて検出する)

当クリニックでは、咽頭(のど)の検査の場合うがい液を用いて、性器の感染の場合、尿や膣ぬぐい液を用いて検査します。当クリニックでは、PCR法により淋菌を証明します(検査結果は最短で3日程度)。スクリーニング検査(現在、感染しているかどうかを調べる検査)として、適した方法です。

淋菌の治療

クラミジアは抗生物質を服用すれば数日で症状が改善していくのに対し、淋病はなかなか改善が見られない症例も見受けられます。薬の効きが悪いと、さらに症状が悪化してしまう場合もあります。クラミジアも決して油断できない病気ですが、淋病はさらに厄介な性病といえます。淋菌性尿道炎の治療には、セフェム系抗菌薬のセフトリアキソン、セフォジジム、スぺクチノマイシンの3種類の注射薬の単回投与が推奨されています。
近年、ペニシリン系やニューロキノロン系の抗菌薬に対して耐性を持つ淋菌が増加し問題となっています。性感染症を含めた治療が重要です。

クラミジア

クラミジアは、性感染症の中で最も多い疾患です。男性の症状は、尿道のかゆみ、排尿時痛、尿道から粘液性分泌物をみとめることがあります。女性の症状は、おりものが増える、性行為時の疼痛、不正出血、下腹部の違和感・疼痛です。

淋菌と症状が似ていますが、クラミジアの方が症状が軽いことが多いです。一方で症状が軽いため、感染に気付かず、病状が進行した後に気付くことがあります。(潜伏期間は1-3週間程度です)

症状が軽いという点から未治療のまま経過し、感染が重篤になり、不妊症の要因となってしまうことがあります。

クラミジアの検査・治療

クラミジアの検査は、感染部位によって変わり、性器の場合は尿や膣ぬぐい液、口腔の場合はうがい液を検査し、クラミジアの有無を確認します。

クラミジアの治療は抗生剤の内服をしていただきます。

梅毒

梅毒は、トレポネーマ(Treponema palidum)という細菌による感染症です。性行為だけではなく、キスによっても感染する感染力の強い性感染症です。
また、妊娠中の母親から胎児に感染する場合もあります。

免疫ができないため、一度感染して治療をしても再度感染する可能性もあります。

梅毒の経過

①第1期(感染後3週間後)
痛みがなく・硬い潰瘍、ただれが感染部位(性器・肛門・口など)にできます。
しかし、治療を行わなくても症状が消失するため、この時期に診察を受けることが大事です。

②第2期(感染後3か月程度)
第1期の症状が一度消失し、数か月経過すると、全身の発疹、発熱、咽頭痛などが発生します。

③潜伏期
症状が特に出現しない時期です。採血では、感染の有無は判断可能です。

④後期梅毒(数年~10年)
全身の臓器(心臓・脳など)に損傷を与え、命に係わる状態になる場合があります。

梅毒の検査・治療

梅毒の診断は、症状および血液検査にて判断します。治療は、ペニシリンなどによる抗生物質を投与します。適切な治療をすれば、梅毒は完治する病気ですが、治療を行わないと、命にかかわる状態になる場合があります。

カンジダ

カンジダ症は、カビ(真菌)によって引き起こされる感染症です。
症状は、男性では無症状のこともありますが、性器にかゆみや発赤が発生します。女性の症状では、陰部にかゆみ、おりものが白くなる場合があります。また性器の痛みや性交時の疼痛で気づく場合もあります。

カンジダの検査・治療

カンジダの検査は、性器や尿、感染部位を綿棒でこすって、検体を培養しカンジダの有無を調べます。

カンジダの治療は、感染部位に応じて、抗真菌薬の塗り薬や飲み薬を使用します。

当院での診察

受診希望でもデリケートな部分なため、来院を迷われる方も多くいらっしゃると思います。また、「放置していたらいずれ治るだろう」と思い深刻な状態でようやく来院される方も少なくありません。事態が深刻になる前に一度受診することをおすすめいたします。
当院は予約システムも導入しており、クリニックでは珍しい『おしっこ外来』もございます。
予約時の問診をしていただくと、なるべくお待たせすることなくスムーズに診察・検査をさせて頂いております。尿道か喉のどちらかに異変を感じたら、お気軽にご相談して頂ければと思います。

性病の検査を受けたいが、受付で言いたくない場合は、「腎機能が検診で引っかかった」と言ってください。
診察の際に、性病検査ご希望と医師に伝えていただけば、検査をさせていただきます。
また、WEB予約やLINE予約の際に、問診をご入力いただければ、受付では症状などを言わずに診察が可能です。