クレアチニンを悪化させる食べ物 5選
クレアチニンは筋肉の代謝産物で、腎臓から排泄されます。腎臓が悪くなるとクレアチニン値が上昇しますが、一部の食べ物がその腎機能の悪化を早めたり、見かけ上クレアチニンを高くすることもあります。
今回は、クレアチニンの上昇・悪化させてしまう食べ物を5つご紹介します。
- タンパク質が豊富な食べ物
- クレアチンが豊富な食べ物
- 糖分を多く含んだ飲み物
- インスタント食品や加工食品
- 水分不足
クレアチニンを悪化させる食べ物:①タンパク質が豊富な食べ物
慢性腎臓病(CKD)ではタンパク質の過剰摂取が腎臓に負担をかけ、血清クレアチニン(Cre)値の上昇(腎機能悪化)につながります。慢性腎臓病の患者さんやクレアチニンが高いと言われた方は、タンパク質のとりすぎには注意をしてください。
CKDでは腎臓の機能が低下するため、タンパク質由来の老廃物(クレアチニンや尿素など)の排泄が十分にできなくなります。食事中のタンパク質が多いと、クレアチニン量がたくさん作られ、血中に蓄積してクレアチニン値の悪化を招きます。また、高タンパク質食は腎臓の糸球体で、普段により過剰にろ過をするため、腎臓をさらに傷めてしまいます。
タンパク質摂取量に関する最新ガイドライン
日本人の食習慣を踏まえた推奨量が示されており、腎機能が低下するほど厳格な制限が勧められます。具体的には、ステージG3aでは0.8~1.0 g/kg標準体重/日、ステージG3b~G5では0.6~0.8 g/kg/日にタンパク質摂取を抑えるよう推奨されています。
植物性食品を多く含む地中海式食事が腎臓に望ましい食事スタイルだとも言われています。
避けるべき高タンパク質食品
特にクレアチニン値の悪化に寄与しやすい高タンパク質食品として、以下のような動物性タンパク質を多く含む食品は可能な限り控えることが推奨されます。
赤身肉(牛肉・豚肉・羊肉などのレッドミート)
赤身の肉類は良質まタンパク源ですが、CKD患者にとっては腎機能悪化のリスク因子となり得ます。研究では、赤身肉の摂取量が多い人ほど腎機能低下や末期腎不全(ESRD)への進行リスクが高まることが報告されています。赤身肉にはクレアチニンの前駆物質であるクレアチンが多く含まれ、調理によりクレアチニン自体も生成するため、食後の血清クレアチニン値を一時的に上昇させる要因ともなります。また、赤身肉の過剰摂取は、尿毒素を増加させるため、これらが腎障害を進める可能性があります。
赤身肉中心の食事パターンは「西洋型」食事として慢性的炎症や酸化ストレスを惹起しやすく、クレアチニンを上げやすいと言われています。一方、赤身肉を鶏肉(白身肉)に置き換えることで、尿中アルブミン排泄が減少したとの報告もあり、動物性タンパク質の中では鶏肉のほうが、腎臓には優しいと考えられます。
総じて、牛・豚などの赤身肉はできるだけ頻度と量を減らすことが望ましいです。
高タンパク質の乳製品(全脂肪乳・チーズ・クリームなど)
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品は、CKD患者にとってはタンパク質とリン、カリウムの供給源でもあり、注意が必要です。コップ1杯(240ml)の牛乳には約8gのタンパク質と200mg超のリンが含まれます。
腎機能が低下した状態で乳製品を過剰に摂取すると、余分なリンが血中に蓄積して高リン血症を招き、骨からカルシウムを引き出すため、骨粗鬆症リスクを高めます。実際、乳製品などリンの多い食品を摂り過ぎると骨密度低下や血管石灰化を招くため、クレアチニンが高い方ではリン制限も大切です。
加えて乳製品は高タンパクな食品であり、摂りすぎれば余剰のタンパク質が血中に蓄積してしまうため、制限することが必要です。特にチーズやアイスクリームなど濃縮された乳製品は少量でもタンパク質・リン負荷が大きいため注意してください。
CKD患者ではコップ1杯の牛乳や1枚のチーズでもタンパク質が豊富ですので、控え目に取るようにしましょう。
動物性タンパク質と植物性タンパク質の影響の違い
タンパク質でも、動物性由来か植物性由来かによって腎臓への影響が異なります。CKD患者では可能な限り植物性タンパク質をメインにするほうが、クレアチニンを悪化させにくいとされています。
動物性タンパク質(特に肉類)は体内で硫酸などの強酸を産生しやすく、食事由来の酸負荷(食事性酸塩基負荷; DAL)が高まります。動物性タンパク質に摂取による慢性的な酸化アシドーシス(酸負荷)は、腎臓にも有害な環境を作るため、腎臓の機能が低下します。一方、植物性タンパク質は、酸負荷が低いため、腎機能悪化の進行が緩やかになります。
つまり、動物性タンパク質主体の食事は腎臓に「酸性ストレス」を与え、植物性主体の食事はそれを和らげる傾向があります。
日本人の和食は、元々植物性食品と魚介類を中心としており、動物性タンパク質比率は50%程度と他の国の食事に比較すると低めです。そのため和食スタイルで大豆食品(納豆、豆腐、豆乳など)や豆類、穀類からタンパク質を摂り、魚や鶏肉などの動物性タンパクを少量加える形が、CKD食としては理想的です。地中海式食事(魚介・豆類・野菜・オリーブ油を多用)やベジタリアン食もCKDに有益です。
推奨されるタンパク質摂取量と食品例
適切なタンパク質摂取量の管理は、CKD患者における食事療法の柱です。一般的な目安としては以下のとおりです。
CKD非透析期(ステージ3~5)であれば、 0.6~0.8 g/kg標準体重/日 程度(体重60kgの人で1日約36~48g)が推奨されます。
0.8g/kgはWHO推奨量(健常者の必要量)に近く、0.6g/kgでも専門家の管理下であれば栄養状態を保てる範囲です。自分の標準体重(身長(m)×身長(m)×22)から目標タンパク質量を計算し、それを1日3食に均等に配分することが望ましいです。
ex)170cm の方であれば、38.1g~50.8g程度です。
食品ごとのタンパク質含有量
実際の食事でタンパク質〇〇gという数値を管理するのは難しいため、具体的にタンパク質量をお見せします。
●肉類
鶏もも肉(皮つき)約60gでタンパク質10g。豚ロース肉0gでもタンパク質10gになります。ハンバーグ(パティ)100gではタンパク質14g、唐揚げ3個(100g)でタンパク質17g含まれます。
●魚介
サンマ約50g(半尾)でタンパク質10g、マグロ刺身約40gでタンパク質10g。焼き鮭1切れ(70g)でタンパク質15g程度です。海老や貝類も100gで15~20g程度のタンパク質を含みます。
●卵
卵1個で約6~7g。1個半(約80g)でタンパク質10g。
●乳製品
牛乳コップ1杯(200ml強)でタンパク質約6~7g、ヨーグルト100gでタンパク質3~5g、プロセスチーズ20gでタンパク質5gです。
●大豆製品
木綿豆腐1/2丁(約150g)でタンパク質約10g、絹ごし豆腐200g(2/3丁)でタンパク質10g。納豆1パック(50g)でタンパク質約5g、豆乳200mlでタンパク質7g前後です。
●穀類・芋類
ご飯普通茶碗1杯(150g)でタンパク質約3.8g、小麦食パン6枚切1枚でタンパク質約4.5gと主食にもタンパク質は含まれます。じゃがいも中1個でタンパク質約2gです。
上記の例からも分かるように、肉や魚は少量でタンパク質が多くであり、豆腐や牛乳でも比較的多くのタンパク質を含みます。CKD患者が1日40g程度にタンパク質を抑えるには、例えば「朝食10g、昼食15g、夕食15g」などと配分し、主菜の量を調整する必要があります。主菜としては、魚や鶏肉は少量にし、副菜にはタンパク質の少ない野菜料理を組み合わせるとよいでしょう。
クレアチニンを悪化させる食べ物:②クレアチンが豊富な食べ物
クレアチン(クレアチニンではありません・・・)は、筋肉でエネルギー源として使われる成分で、肝臓・腎臓・膵臓で合成されます。クレアチンのは代謝されて、クレアチニン(creatinine)となり、最終的に腎臓から尿として排泄されます。
腎機能が低下している場合、このクレアチニンの排泄が滞り、血中濃度が上昇します。つまり、外部から多量のクレアチンを摂取すると、結果としてクレアチニン値が高くなる傾向があります。
クレアチンは動物性タンパク質に多く含まれています。具体的には、
- 牛肉(赤身)
- 豚肉(ロース)鶏肉(胸肉・もも肉)
- 魚(ニシン、サケ、マグロ)
1つ目にご紹介したタンパク質が多い食材と似ていますね。
筋肉量が多い部位がクレアチンが多いです。牛・豚・魚などの筋肉質な部位には特に多く含まれます。
クレアチニンを悪化させる食べ物:③糖分を多く含んだ飲み物
クレアチニンを悪化させるリスクがある食物の中で、糖分が豊富な食品は注意が必要です。直接クレアチニンを上昇させるわけではありませんが、血糖のコントロール悪化すると糖尿病進行がするため、結果的に糖尿病性腎症を発症し、クレアチニン上昇させることから腎機能に深刻な影響を与えます。
- お菓子類(ケーキ、クッキー、ドーナツ、菓子パン)
- 砂糖入り飲料(ジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒー飲料)
- アイス・ゼリー
糖尿病性腎症は、透析導入する理由として、最も多い透析導入原因なんですよ。
クレアチニンを悪化させる食べ物:④インスタント食品・加工品
ハムやベーコン、ソーセージといった加工肉も赤身肉同様にCKD患者にはおすすめしません。加工品を利用する場合は少量にしていただき、減塩のものを選ぶようにしてください。
- ハム、ソーセージ、ベーコン
- レトルトカレー、インスタントラーメン
- 缶詰肉(コンビーフなど)
- カップ焼きそば、レトルト丼もの
- 加工チーズ
過剰なナトリウム(塩分)による腎臓負担
ナトリウムが過剰になると、血圧が上昇しやすくなり、それが腎臓の毛細血管(糸球体)に圧をかけます。糸球体の障害が進行すると、ろ過機能が低下してクレアチニンが排泄されにくくなります。
リン添加物の過剰摂取
加工肉やインスタント食品には、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどの無機リン添加物が多く含まれます。これは風味改善や保存目的に使われていることが多いです。無機リンは吸収率が90%以上と高く、血中リン濃度を急激に上げます。
腎機能が低下している場合、リンの排泄が難しく、高リン血症に繋がります。高リン血症は、血管石灰化を引き起こすため、腎機能悪化に繋がります。
クレアチニンを悪化させる食べ物:⑤水分不足
脱水になると血液量が減少し、腎臓への血流が減ります。その結果、腎臓でのろ過機能が低下し、血液中のクレアチニンの排泄が低下し、血中濃度が上昇します。
急性腎障害である腎前性腎不全は、まさに脱水による腎血流低下が原因で起こる病気であり、その結果入院が必要になる方もいます。夏場が特に注意が必要で、高齢者やCKD患者では、軽度の脱水でも急激な腎機能悪化を起こしやすいので注意しましょう。
脱水対策
・1日1.5〜2L程度の水分摂取(腎臓病の進行具合によって調整)
・カフェイン飲料・アルコールは利尿作用があるいため、摂取の際は水を多めにとる
・運動後・入浴後・発熱時・下痢や嘔吐があるときは、特に意識的に水分補給をしましょう
・尿の色(淡黄色〜透明が理想)が濃い場合は、脱水を疑いましょう