睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が何度も止まったり、浅くなったりする病気です。
代表的な症状には、以下のものがあります。
- 日中の眠気
- 集中力の低下
- いびき
- 起床時のだるさ
この病気で注意が必要なのは、眠っている間だけの問題では終わらないということです。
睡眠中に呼吸が乱れると、脳や体が十分に休めず、注意力の低下や日中の眠気につながります。その結果、車の運転中に眠気が出たり反応が遅れたりして、交通事故の発生リスクが高まる可能性があります。
アメリカの診療ガイドラインでも、閉塞性睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気を引き起こす代表的な原因であり、居眠り運転や交通事故のリスクに関連しているとされています。また、閉塞性睡眠時無呼吸症候群がある方は、自動車事故リスクが全体として2〜3倍高くなると言われています。
(Strohl KP, et al. An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline: Sleep Apnea, Sleepiness, and Driving Risk in Noncommercial Drivers. Am J Respir Crit Care Med. 2013.)
なぜ交通事故リスクが高くなるのか

睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間に低呼吸や無呼吸が繰り返されます。そのたびに血液中の酸素が低下し、呼吸が再開する際に脳が何度も覚醒に近い状態になります。
本人は寝ているつもりでも睡眠が途切れ途切れになっており、深い睡眠が取れていない可能性があります。
その結果、日中に強い眠気が出やすくなり、運転中にも眠気が発生します。特に高速道路や長い直線道路、単調な道では刺激が少なく、眠気が強く出やすくなります。
アメリカのガイドラインでも、高速道路などの単調な道路で起こる事故の最大20%が眠気に関係している可能性があるとされています。
また、以下の要因が重なると、睡眠時無呼吸症候群による眠気がさらに強くなることがあります。
- 睡眠不足
- 飲酒
- 睡眠薬の服用
- 長時間労働
本人が「少し眠いだけ」と感じていても、実際には運転に必要な反応速度や判断力が低下している場合があるので、注意が必要です。
交通事故を起こした運転手が睡眠時無呼吸症候群の有無
交通事故を起こした102名のドライバーを対象に、睡眠時無呼吸症候群の有無を評価した研究があります。
睡眠中に無呼吸や低呼吸になっている回数(AHI)が10回以上の人は、交通事故のリスクが6.3倍に増加しており、睡眠時の無呼吸が多いほど、交通事故のリスクが上昇していていました。

睡眠時無呼吸症候群と交通事故リスクを調べた論文
The Association between Sleep Apnea and the Risk of Traffic Accidents. J. Terán-Santos , et al. N Engl J Med 1999;340:847-851
眠気を自覚しにくい人も
睡眠時無呼吸症候群で難しいのは、本人が日中の眠気を自覚していない場合があることです。
長い期間、睡眠の質が悪い状態が続くと「これが普通かも」と感じてしまい、日中の眠気や疲労感を病気のサインと認識しにくくなります。また、運転に慣れている方や仕事が忙しい方ほど「自分は大丈夫」と考える傾向があります。
しかし、運転中に一瞬でも意識が途切れたり、前の車への反応が遅れたりすると、大きな事故の原因になる可能性があります。特に注意が必要なのは、以下のような場合です。
- 信号待ちでウトウトする
- 運転中に眠くなる
- 長距離運転で集中力が続かない
- 同乗者から運転中の眠気を指摘された
- 過去にヒヤリとした経験がある
このような方で、いびきや無呼吸を指摘されている場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考えることが大切です。
運転を仕事にしている方は、特に注意が必要です。
タクシー、バス、トラック、配送業など、運転を仕事にしている方は、睡眠時無呼吸症候群の有無を確認することが非常に重要です。
早朝・深夜勤務、不規則な生活、長時間運転などが重なると、疲労や眠気が蓄積しやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群による眠気と交通事故の関係は、個人の健康問題であると同時に、職場の安全管理や交通安全にも関わるわけです。
また、タクシー会社の中には、運転手の方全員に必ず一度は睡眠時無呼吸症候群の検査を受けるように指導しているところもあります。
治療により事故のリスク低下を期待
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療に、CPAP(シーパップ)治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法)があります。これは睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、喉の空気の通り道が塞がらないように広げる治療です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、日中の眠気や注意力低下により、居眠り運転や交通事故のリスクが高くなることがあります。
CPAP治療は、睡眠中の無呼吸を減らし、睡眠の質を改善することで、日中の眠気や運転中の注意力低下を改善する可能性があります。
実際に、運転シミュレーターでの成績改善や、交通事故リスクの低下を示した報告もあり、アメリカのガイドラインでも、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の方に対して、運転リスクを下げる目的でCPAP治療が推奨されています。
ただし、これらの効果を十分に得るためには、CPAPを継続して使用することが大切です。
(Tregear S, et al. Continuous positive airway pressure reduces risk of motor vehicle crash among drivers with obstructive sleep apnea: systematic review and meta-analysis. Sleep. 2010.)
