
「毎晩いびきがうるさいと家族に言われる」「日中、どうしても眠くて集中できない」。こうした悩みで検索すると、内科・耳鼻咽喉科・呼吸器内科・睡眠外来などいろいろな科が出てきて、結局どこに行けばよいのか迷ってしまう方は多いと思います。
先にお伝えしたいのは、いびきや眠気があるからといって、すぐに重い病気だと決まるわけではないということです。一方で、いびきと強い眠気が続く場合、その裏に「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という、治療で改善できる病気が隠れていることがあります。
この記事では、いびきと眠気を「どの科で相談すればよいか」、そして「どんなときに受診を急いだ方がよいか」を中心に、内科医の立場から整理してお伝えします。読み終えたときに、ご自身が次に取るべき行動が分かることを目指しています。
まず知っておきたいこと(いびきと眠気の関係)
いびきは、眠っている間に空気の通り道(気道)がせまくなり、その壁が振動して音が出る現象です。お酒を飲んだ日や疲れた日だけ出る一時的ないびきなら、それほど心配のいらないことがほとんどです。
注意したいのは、「大きないびき」と「日中の強い眠気」がセットで続くときです。眠っている間に気道が塞がって呼吸が止まったり浅くなったりを繰り返すと、体は何度も浅い眠りに引き戻され、しっかり眠ったつもりでも脳や体は休めていない状態になります。これが睡眠時無呼吸症候群です。医学的には、10秒以上呼吸が止まる状態が睡眠中に繰り返し起こり、睡眠1時間あたり5回以上生じるものが目安とされています。
決してまれな病気ではありません。日本では睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が5以上の人は約2,200万人、15以上の人でも約940万人と推計されています。ただし治療が必要なレベルの方に絞っても推定300万人以上いる一方、実際に治療を受けている人は20数万人程度にとどまるとされ、多くの方が気づかないまま過ごしている可能性があります。

いびきと眠気、結局「何科」を受診すればいい?
ここが一番迷うところだと思います。いびきや眠気は、内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科・循環器内科・睡眠を専門とする外来など、複数の科が関わります。そのため「正解がひとつに決まらない」ように見えてしまいます。
考え方をシンプルにすると、次のようになります。
まず入口としておすすめしやすいのは、内科(かかりつけの内科や睡眠時無呼吸の検査を行っている内科)です。理由は、いびきや眠気は睡眠だけの問題ではなく、高血圧や糖尿病、肥満、心臓の負担といった全身の状態と深く関わっているためです。内科では、まず問診と簡単な検査で「睡眠時無呼吸症候群の可能性がどのくらいあるか」を評価し、必要に応じて適切な科へつなぐ、という交通整理ができます。
一方で、次のようなケースでは耳鼻咽喉科が向いていることもあります。慢性的な鼻づまりがある、アレルギー性鼻炎で口呼吸になりやすい、扁桃(へんとう)が大きいと言われたことがある、お子さんのいびき、といった「のど・鼻の構造」が主な原因と考えられる場合です。
また、すでに高血圧や心臓の病気で通院している方は、まずその主治医(内科・循環器内科)に相談すると、持病と合わせて評価してもらえます。
迷ったときの原則としては、「まず内科で相談し、必要な科へ振り分けてもらう」と考えておくと、遠回りになりにくいです。

考えられる主な原因
いびきや眠気の背景には、いくつかの原因が重なっていることが多いです。頻度や注意度で整理します。
比較的よくある一時的な原因としては、飲酒(のどの筋肉がゆるむ)、疲労や睡眠不足、風邪や花粉症などの鼻づまり、仰向けで寝る姿勢などがあります。これらは生活の工夫で軽くなることもあります。
放置しない方がよい原因の代表が、睡眠時無呼吸症候群です。とくに肥満、あごが小さい、首が太い、扁桃が大きいといった特徴があると起こりやすくなります。無呼吸を繰り返すと血管や心臓に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞などの循環器疾患のリスクが3〜4倍高くなると報告されています。血圧との関係も深く、無呼吸のない人と比べて高血圧を発症するリスクが約1.4〜2.9倍になるというデータや、薬を飲んでも下がりにくい「治療抵抗性高血圧」の最も多い要因のひとつとされることも知られています。
緊急性という観点で見落とせないのが、日中の強い眠気による事故です。とくに運転中の眠気は危険で、睡眠時無呼吸症候群の方は、そうでない人に比べて交通事故のリスクが約2.4倍という報告があります。
薬や生活習慣が関係することもあります。寝る前の飲酒や、一部の睡眠薬・安定剤はいびきを強めることがあり、体重増加も悪化の要因になります。
受診を急いだ方がよいサイン
次のような場合は、早めの受診をおすすめします。
- 運転中や仕事中に、こらえられないほどの強い眠気に襲われる
- 家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」「息を吸い直すような音がある」と指摘された
- 朝起きたときに頭痛や頭の重さがある、熟睡感がない
- 夜間に何度もトイレに起きる
- 血圧が高く、薬を飲んでもなかなか下がらない
とくに、運転中や機械の操作中に眠気で危険を感じたことがある場合は、事故につながる前にご相談ください。眠気の程度を客観的に見る方法として、8つの場面での眠りやすさを点数化する「エプワース眠気尺度(ESS)」という質問票があり、日中の眠気の強さの目安として広く使われています。

医療機関では何を調べるか
医療機関では、いきなり大がかりな検査をするわけではなく、段階的に調べていきます。
はじめに問診で、いびきの状況、日中の眠気、体重、血圧、持病、飲酒や服薬などを確認します。あわせて診察や血圧測定、必要に応じて血液検査、血中の酸素の状態(酸素飽和度)、心電図などで全身への影響を確認します。
睡眠中の呼吸そのものを調べるには、まずご自宅でできる簡易検査(携帯型の機器を装着して一晩眠るだけの検査)を行うことが一般的です。この結果、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が分かります。重症度はAHIが5以上15未満で軽症、15以上30未満で中等症、30以上で重症と分類され、AHIが5以上で症状がある場合や、5以上で高血圧・糖尿病などがある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
より詳しく調べる必要がある場合は、医療機関で一泊して行う精密検査(ポリソムノグラフィー=PSG)を検討します。治療としてCPAP(睡眠中に鼻マスクから空気を送り、気道が塞がるのを防ぐ装置)を保険で導入する目安は、簡易検査でAHIが40以上、精密検査(PSG)でAHIが20以上とされています。ただし、この数値に届かなくても症状が強い場合は追加の検査を検討することがあります。

つつじヶ丘駅前内科クリニックでできること
当院(東京都調布市・つつじヶ丘駅前)では、いびきや眠気が気になる方に対して、まず内科の視点から評価を行います。
具体的には、問診によるスクリーニング、血圧測定、血液検査、心電図検査、酸素飽和度の測定に加え、睡眠時無呼吸症候群の自宅検査に対応しています。あわせて、高血圧・糖尿病・脂質異常症といった、いびきや眠気と関わりの深い生活習慣病の評価・相談も行えます。全身の状態と合わせて確認できるのが、内科で相談していただくメリットです。
予約はLINE・WEB・電話から可能で、予約優先制、キャッシュレス決済にも対応しています。「病気かどうか分からないけれど気になる」という段階でも、まずはご相談ください。

当院で対応できない場合
当院では、以下については実施しておらず、必要な場合は連携する専門医療機関をご紹介します。
- 一泊入院して行う精密検査(PSG)は当院では実施していません
- 扁桃摘出などの耳鼻咽喉科的な手術は行っていません
- 画像検査(CT・MRIなど)や入院が必要な場合は、連携医療機関をご案内します
自宅簡易検査で詳しい評価や治療の導入が必要と判断された場合は、適切な医療機関へおつなぎしますので、ご安心ください。
よくある質問
Q. いびきをかくだけでも受診した方がよいですか?
A. 疲れた日やお酒を飲んだ日だけの一時的ないびきなら、多くは様子を見て問題ありません。ただし、大きないびきと日中の強い眠気が続く場合は、一度ご相談いただくことをおすすめします。
Q. 眠気があるだけで、いびきは指摘されていません。それでも関係ありますか?
A. 一人暮らしなどでいびきに気づかれないこともあります。日中の強い眠気が続く場合は、睡眠時無呼吸以外の原因も含めて確認する価値があります。
Q. 検査はつらいですか?入院が必要ですか?
A. 最初の簡易検査はご自宅で、機器を装着して一晩眠るだけです。入院は必要ありません。より詳しい精密検査が必要な場合のみ、専門医療機関での一泊検査を検討します。
Q. 太っていないのに、いびきや無呼吸になることはありますか?
A. あります。あごの大きさや骨格、鼻づまり、扁桃の大きさなども関係するため、やせている方でも起こることがあります。
Q. CPAPは一度始めたら一生やめられないのですか?
A. 体重や生活習慣の改善によって状態が変わることもあります。まずは正確に評価することが大切で、治療の続け方は状態に応じて主治医と相談していきます。
まとめ
いびきや日中の眠気は、多くの場合すぐに重い病気を意味するわけではありません。過度に心配しすぎる必要はありません。
一方で、大きないびきと強い眠気が続くときは、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあり、放置すると高血圧や心臓・血管の病気、事故のリスクにつながることがあります。「何科か迷ったら、まず内科で相談し、必要な科へ振り分けてもらう」と考えておくと、遠回りになりにくいです。
つつじヶ丘駅前内科クリニックでは、問診や自宅でできる簡易検査、生活習慣病の評価を通じて、次に取るべき行動を一緒に整理します。気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」 https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20200730145402.html (重症度分類、診断・CPAPの考え方)
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)」(PMDA掲載) https://www.pmda.go.jp/files/000280608.pdf (日本の有病率:AHI5以上 約2,200万人、AHI15以上 約940万人)
- 国土交通省「自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル(令和7年7月)」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03manual/data/sas_manual.pdf (交通事故リスク約2.4倍、職業ドライバーの有病率)
- 国土交通省 自動車交通局 SAS関連資料 https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/09/090318/090318.pdf (無呼吸の医学的定義の目安)
執筆者情報
つつじヶ丘駅前内科クリニック院長
医学博士・腎臓専門医・透析専門医・内科認定医
CPAP療法士
小出高彰





