市販の痛み止めは腎臓に悪い?飲む前に知っておきたい「注意が必要な人」

市販の痛み止めと腎臓のイメージイラスト

「痛み止めをよく飲むけれど、腎臓に悪いって聞いて心配」「ネットで“ロキソニンは腎臓に良くない”と見て、飲むのが怖くなった」。そんな不安から、このページを開かれた方が多いのではないでしょうか。

先に結論をお伝えします。市販の痛み止めが腎臓に負担をかけることがあるのは事実です。ただし、それは「誰が飲んでも一律に悪い」わけではありません。健康な方が、頭痛や生理痛のときに数日、決められた量で使う分には、腎臓への影響が問題になることはそれほど多くありません。注意が必要なのは、もともと腎臓や心臓の働きが弱っている方、ご高齢の方、特定の薬を飲んでいる方、そして「長く・多く・重ねて」飲んでしまう飲み方です。

この記事では、なぜ痛み止めが腎臓に関係するのか、どんな人・どんな飲み方が要注意なのか、そして安全に付き合うためのポイントを、腎臓を専門とする立場からやさしく整理します。

市販の痛み止めと腎臓のイメージイラスト

まず知っておきたいこと:なぜ「痛み止め」と「腎臓」が関係するの?

ここで話題にしている市販の痛み止めの多くは、「NSAIDs(エヌセイズ/非ステロイド性抗炎症薬)」という種類です。ロキソプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナク、アスピリンなどがこれにあたり、市販薬では「ロキソニンS」「イブ」「バファリン」などに含まれています。

NSAIDsは、体の中で炎症や痛みを起こす「プロスタグランジン」という物質のはたらきを抑えることで、痛みや熱をやわらげます。とても頼りになる薬です。

ただ、このプロスタグランジンには、腎臓の中の細い血管(輸入細動脈)をひろげて、腎臓への血流を保つという別の役割もあります。NSAIDsでプロスタグランジンが抑えられると、腎臓の血流が一時的に減り、腎臓のろ過機能(GFR)が下がることがあります。

大切なのは、この影響が出やすいのは「腎臓への血流がもともとぎりぎりの状態の人」だという点です。若く健康な方では、体に予備の力があるため、通常の使い方であれば腎機能が大きく変わらないと報告されています。逆に言えば、予備の力が少ない方ほど、NSAIDsの影響を受けやすいということになります。

注意が必要なのはどんな人?

ChatGPT Image 2026年7月20日 14 50 58

同じ痛み止めでも、腎臓への影響の出やすさは人によって大きく違います。次のような方は、腎臓の「予備の力」が少なくなっているため、より注意が必要とされています(日本腎臓学会の資料などによる)。

  • 高齢の方
  • もともと腎臓の働きが低下している方(慢性腎臓病=CKD)
  • 高血圧、糖尿病、心不全、肝臓の病気がある方
  • 脱水になりやすい状況の方(夏の暑い時期、発熱、下痢や嘔吐が続いているときなど)
  • 降圧薬のうち「ACE阻害薬・ARB(RAS阻害薬)」や「利尿薬」を飲んでいる方

特に、暑い季節に汗をたくさんかいて水分が不足しているときは、腎臓への血流が下がりやすく、痛み止めの影響が出やすくなります。

もし健診で「eGFRが低い」「尿たんぱくが出ている」と指摘されたことがある方は、上のグループに近い状態です。市販薬を使う前に一度ご相談いただくと安心です。

なかでも知っておいていただきたいのが、「降圧薬(ACE阻害薬・ARB)+利尿薬+痛み止め(NSAIDs)」の3つが重なる組み合わせです。海外では“トリプルワミー(三重の打撃)”と呼ばれ、注意が呼びかけられています。約49万人を対象とした英国の大規模研究では、この3剤の併用は、痛み止めを加えない場合に比べて急性腎障害のリスクがおよそ31%高く、特に飲み始めからの30日間でリスクが最も高いと報告されています(Lapi Fら, BMJ 2013)。日本の保険データを用いた研究でも、この3剤に痛み止めが加わってから急性腎障害が起こるまでの期間は中央値でおよそ6.5日と、比較的早い時期に生じうることが示されています(J Pharm Health Care Sci, 2025)。複数の研究をまとめた解析でも、リスクはおよそ2倍と見積もられています(Br J Clin Pharmacol, 2025)。

ただし、これは「該当する方は痛み止めを絶対に飲めない」という意味ではありません。市販薬を使ってよいか、使うならどの薬をどれくらいか、を医師と相談しておけばよい、というお話です。

降圧薬・利尿薬・痛み止めの3剤併用(トリプルワミー)を示す図

気をつけたい「飲み方」

体質だけでなく、飲み方によってもリスクは変わります。次の3点は特に気をつけたいポイントです。

第一に、長期間・毎日のように飲み続けることです。痛みが続くからと市販薬を漫然と使い続けると、腎臓への負担が積み重なることがあります。数日使っても症状が改善しない場合は、飲み続けるのではなく受診の目安と考えてください。

第二に、成分の「重ねすぎ」です。市販の総合感冒薬や頭痛薬には、痛み止め成分にカフェインなどが組み合わさった複合薬が多くあります。過去の「鎮痛薬による腎障害」の報告では、その多くが複数成分を含む薬の長期使用と関連していたとされています。複数の薬を自己判断で組み合わせたり、同じ成分を含む薬を知らずに重ねて飲んだりしないよう、成分表示を確認しましょう。

第三に、脱水のまま飲むことです。発熱・下痢・炎天下などで水分が不足しているときは、まず水分をとることが大切です。

市販の痛み止めで気をつけたい飲み方3つのポイント

受診を急いだ方がよいサイン

痛み止めを使っていて、次のような症状が出たときは、腎臓のはたらきが急に落ちている可能性があります。自己判断で様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。

  • 尿の量が急に減った、ほとんど出ない
  • 手足や顔のむくみが強くなった、体重が数日で急に増えた
  • 強いだるさ・吐き気・食欲低下が続く
  • 息苦しさ、ぼんやりする、意識がはっきりしない

このうち、尿がほとんど出ない、意識がぼんやりする、強い息苦しさといった症状は、緊急性が高いため救急医療機関への受診が必要です。

一方で、はっきりした症状がなくても、次の場合は数日以内〜近いうちの受診をおすすめします。市販薬を数日使っても痛みが続く、もともと腎臓・心臓・肝臓が弱い方や降圧薬・利尿薬を飲んでいる方が痛み止めを続けたい、健診で腎臓の数値の異常を指摘された、といったケースです。

医療機関では何を調べるか

腎臓への影響を確認するために、医療機関では次のようなことを行います。特別に難しい検査ばかりではなく、多くはその日のうちにできるものです。

  • 問診:市販薬を含めて、どんな薬をいつから飲んでいるか、水分や体調の様子
  • 血圧測定
  • 血液検査:クレアチニンやeGFR(腎臓のろ過機能)、カリウムなど
  • 尿検査:尿たんぱく、尿潜血など
  • 必要に応じて腹部・腎臓の超音波検査

痛み止めによる腎機能の低下は、原因となる薬を早めにやめれば回復することが多いと報告されています。だからこそ、「おかしいな」と思ったときに早く調べることが大切です。

つつじヶ丘駅前内科クリニックでできること

当院は内科・腎臓内科のクリニックで、腎臓内科医が在籍しております。次のような対応が可能です。

  • 内科・腎臓内科での診察と、服薬状況の確認
  • 血圧測定、血液検査(クレアチニン・eGFR・カリウムなど)、尿検査(尿たんぱく・尿潜血)
  • 腹部・腎臓の超音波検査
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症などの生活習慣病の相談
  • 慢性腎臓病(CKD)の評価
  • 健康診断結果の相談
  • 必要な場合の専門医療機関へのご紹介

痛みそのものへの対応についても、腎臓の状態を踏まえて、より負担の少ない選択肢をご一緒に考えます。

当院での腎臓の検査・診察の様子

当院で対応できない場合

当院でできないことは、はっきりお伝えし、必要に応じて適切な医療機関へおつなぎします。

  • 腎臓の組織を調べる腎生検は、当院では実施していません
  • CTやMRIなどの画像検査が必要な場合は、連携医療機関をご案内します
  • 急性腎障害の入院精査や透析が必要な場合は、病院での対応が必要です
  • 尿がほとんど出ない、意識がぼんやりするなど緊急性が高い場合は、救急医療機関の受診が必要です

「当院で全部できます」とは申しません。当院で対応できる範囲で丁寧に評価し、専門的な対応が必要なときは責任を持ってご紹介する、という姿勢で診療しています。

よくある質問

Q1. 頭痛のときにたまにロキソニンを飲む程度でも、腎臓に悪いですか?

健康な方が、決められた量で数日使う程度であれば、腎臓への影響が問題になることは多くありません。心配なのは、長く飲み続ける、量が多い、もともと腎臓などが弱い、という条件が重なる場合です。

Q2. アセトアミノフェン(カロナール)なら腎臓に安全ですか?

アセトアミノフェンは、腎臓の血流を下げる作用がNSAIDsより弱く、腎臓への負担が比較的少ない薬とされ、腎機能が心配な方の選択肢としてよく用いられます。ただし「完全に安全」ではなく、大量・長期の使用は肝臓への負担やまれな腎障害につながることがあります。用量を守ることが大切です。なお日本腎臓学会は、腎機能が低下した方に「無条件で安全な消炎鎮痛薬はない」とも述べており、自己判断より相談が安心です。

Q3. 市販の風邪薬や頭痛薬を続けて飲んでも大丈夫ですか?

複数の成分が入った薬を長く重ねて飲むことは避けたい飲み方です。同じ成分を知らずに重複させないよう、成分表示を確認し、症状が続くときは受診をご検討ください。

Q4. 血圧の薬を飲んでいますが、市販の痛み止めは避けるべきですか?

降圧薬(特にACE阻害薬・ARB)や利尿薬を飲んでいる方は、痛み止めとの併用で腎臓に負担がかかりやすくなることがあります。使ってはいけないわけではありませんが、頻繁に使いたいときは一度ご相談ください。

Q5. 痛み止めで腎臓が悪くなったら、もう元に戻らないのですか?

痛み止めによる腎機能の低下は、早めに原因の薬をやめることで回復することが多いと報告されています。気づいた時点で早めに対応することが回復のカギです。

Q6. 湿布や塗り薬の痛み止めも腎臓に影響しますか?

貼り薬・塗り薬のNSAIDsは、飲み薬に比べると体内に吸収される量が少なく、影響は一般に小さいと考えられます。ただし、広い範囲に大量に使う場合や、もともと腎臓が心配な方では油断せず、使い方を相談すると安心です。

まとめ

市販の痛み止めは、正しく使えば頼りになる薬です。過度に怖がる必要はありません。健康な方が短期間・適量で使う分には、腎臓への影響が問題になることは多くありません。

一方で、高齢の方、腎臓・心臓・肝臓が弱い方、高血圧や糖尿病のある方、降圧薬や利尿薬を飲んでいる方、脱水になりやすい状況の方では、注意が必要です。「長く・多く・重ねて」飲む使い方も避けたいところです。

尿量の減少、強いむくみ、だるさや吐き気などのサインがあれば早めの受診を、緊急性が高い症状は救急受診をご検討ください。健診で腎臓の数値を指摘された方や、痛み止めを続けてよいか迷う方は、飲み方や薬の選び方についてお気軽にご相談ください。当院で腎臓の状態を確認し、必要なときは専門機関へおつなぎします。

参考文献

  • 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023(CQ11-8「疼痛のあるCKD患者への鎮痛薬選択」ほか). Minds ガイドラインライブラリ. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00779/
  • 日本腎臓学会. 薬剤性腎障害診療ガイドライン(日本腎臓学会誌 54巻7号). https://jsn.or.jp/journal/document/54_7/0999-1005.pdf
  • 「NSAIDsによる腎障害」日本腎臓学会誌 58巻7号, 2016年. https://jsn.or.jp/journal/document/58_7/1059-1063.pdf
  • Lapi F, et al. Concurrent use of diuretics, angiotensin converting enzyme inhibitors, and angiotensin receptor blockers with non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of acute kidney injury: nested case-control study. BMJ. 2013;346:e8525.
  • NSAID-induced acute kidney injury risk in patients on renin-angiotensin system inhibitors and diuretics: nationwide cohort study. J Pharm Health Care Sci. 2025. DOI:10.1186/s40780-025-00485-8. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12359997/
  • Calvo DM, et al. Acute kidney injury and morbi-mortality associated with “triple whammy” combination: systematic review and meta-analysis. Br J Clin Pharmacol. 2025. DOI:10.1002/bcp.70263.

執筆者

つつじヶ丘駅前内科クリニック院長
医学博士・腎臓専門医・透析専門医・内科認定医
小出高彰