慢性腎臓病(CKD)とは?|eGFR低下・クレアチニン高値を指摘された方へ


健康診断で「クレアチニン高値」「eGFR低下」を指摘された方へ。慢性腎臓病(CKD)は、初期にはほとんど症状がありません。しかし放置すると、透析だけでなく、脳卒中や心筋梗塞のリスクも高まります。当院では腎臓専門医が、原因の検索から治療まで一貫して行っています。
現在、慢性腎臓病すなわち腎臓の機能が低下している方は、日本国内におよそ1,330万人、成人のおよそ7〜8人に1人いると推計されています(日本腎臓学会)。ご家族や血縁者に一人いてもおかしくない、とても身近な病気です。
腎臓に関するご相談は、腎臓を専門とする医師の外来がある水曜・木曜も承っています。健診結果をお持ちいただき、じっくり相談したい方や、経過を追って定期通院される方にも通いやすい曜日です。
慢性腎臓病とは?


以前は「慢性腎不全」と呼ばれることが多かったのですが、現在は末期の状態だけでなく、初期の段階もすべて含めて「慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)」と呼ばれるようになりました。早い段階で見つけて対処することの重要性が広く認識されるようになったためです。
慢性腎臓病は、次のいずれかが3か月以上続く場合と定義されます。
- 尿蛋白などの尿異常、画像・血液検査などで腎障害の存在が明らかであること(特に尿アルブミン・尿蛋白が重要)
- 腎臓のろ過機能を示すGFR(eGFR)が60mL/min/1.73m²未満であること
慢性腎臓病の症状
慢性腎臓病の最大の特徴は、初期にはほとんど症状がないことです。そのため「特に何も感じていないから大丈夫」と思っていても、健診で初めて異常が見つかることが少なくありません。実際、eGFR低下・クレアチニン高値・尿蛋白などを指摘されて受診される方の多くは、自覚症状がありません。
しかし、腎機能が低下してくると、次のような症状が徐々に現れることがあります。足のむくみ、疲れやすさ、倦怠感、夜間頻尿、息切れ、貧血、食欲低下などです。
さらに進行すると、体内に老廃物や余分な水分が蓄積し、心不全や尿毒症を引き起こすことがあります。だからこそ、症状が出る前の段階で見つけて治療を始めることが大切なのです。
慢性腎臓病の原因
糖尿病性腎症
慢性腎臓病の原因として最も多いのが、糖尿病によるものです。実際、日本で新たに透析を導入される原因の第1位が糖尿病性腎症で、透析導入原因の約4割を占めています(日本透析医学会)。高血糖が長く続くと腎臓の細い血管が傷み、尿蛋白(尿アルブミン)が出現し、進行すると腎機能が低下していきます。すべての糖尿病の方が腎症になるわけではありませんが、血糖・血圧・尿蛋白の管理が不十分だと進行が速まりやすいため、早期からの対策が重要です。


高血圧性(腎硬化症)
高血圧が長期間続くと、腎臓の血管に負担がかかり、腎臓が硬く縮んで(硬化して)機能が低下していきます。糖尿病性腎症に比べると進行はゆるやかな傾向がありますが、近年は高齢化に伴い増加しています。なお、夏場は脱水で血圧が下がりやすく、降圧薬が効きすぎることがあります。血圧が普段より大きく下がったときは、主治医にご相談ください。


慢性糸球体腎炎
腎臓のフィルターにあたる「糸球体」に炎症が起こる病気です。代表的なものにIgA腎症があり、日本人に比較的多くみられます。健診での尿潜血・尿蛋白がきっかけで見つかることがあります。
加齢による腎機能低下
年齢を重ねると、腎機能は誰でも少しずつ低下します。そのため高齢になるほどeGFRは低下しやすくなります。ただし、加齢だけによる低下なのか、治療すべき病気が隠れているのかの見極めが重要です。
CKDのステージ分類(eGFRによる目安)
| ステージ | eGFR値 (mL/min/1.73m²) | 腎機能の状態 | コメント |
|---|---|---|---|
| G1 | ≥ 90 | 正常〜高値 | 蛋白尿が持続する場合はCKD |
| G2 | 60–89 | 軽度低下 | 蛋白尿が持続する場合はCKD |
| G3a | 45–59 | 軽度〜中等度低下 | 定期フォローと生活・血圧管理が重要 |
| G3b | 30–44 | 中等度〜高度低下 | 合併症リスク上昇 |
| G4 | 15–29 | 高度低下 | 腎不全準備期、透析導入の事前説明を検討 |
| G5 | < 15 | 腎不全 | 透析/腎移植の適応を検討 |
※ eGFRのみでの分類です。実際の重症度評価は蛋白尿と組み合わせて行います。
慢性腎臓病(CKD)を放置するとどうなる?
心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がる
慢性腎臓病でとりわけ重要なのが、心臓・血管の病気のリスクが高まることです。100万人以上を対象とした大規模研究では、eGFRが60未満に低下すると、腎機能が正常な人に比べて、心筋梗塞・脳卒中などの心血管イベントや死亡のリスクが段階的に上昇し、eGFRが低いほどリスクが大きくなることが示されています(Go AS, et al. N Engl J Med. 2004;351:1296-1305)。


感染症のリスクが上がる
慢性腎臓病の患者さんは、腎機能が正常な人と比べて、感染症で入院するリスクが高いことも報告されています(Dalrymple LS, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2012ほか)。免疫の働きが低下しやすいためと考えられています。
その他の病気リスク
腎機能の低下に伴って起こる次のような合併症は、いずれも定期的な血液検査で早めに捉え、対処できるものです。CKDの通院が「経過を見るだけ」ではなく、合併症を先回りして防ぐ場でもある、という点を知っておいてください。
- 腎性貧血:赤血球を増やすホルモン(エリスロポエチン)の不足で起こります。だるさや息切れの一因になりますが、注射薬や近年登場した飲み薬(HIF-PH阻害薬)、鉄の補充で管理できます。
- 骨・ミネラルの異常(CKD-MBD):リンがたまり、カルシウムやビタミンDの調整が乱れて、骨がもろくなったり血管の石灰化が進んだりします。
- 高カリウム血症:カリウムの排泄が追いつかず、高くなりすぎると不整脈など危険な事態を招きます。
人工透析(血液透析・腹膜透析)


腎機能が末期(おおむねeGFR 10未満)まで低下すると、体の水分や老廃物を十分に排出できなくなります。水分が過剰になると、最終的に肺に水がたまり(肺水腫)、呼吸が苦しくなります。この段階になると薬物治療での改善は難しく、機械や腹膜を使って血液を浄化する「透析」が必要になります。
透析には主に2つの方法があります。血液透析は、透析施設に週3回通院し、1回あたり4時間程度かけて、透析機器で血液をきれいにする方法です。腹膜透析は、自宅で行える透析で、患者さんご自身がお腹の中に透析液を出し入れする方法です。どちらを選ぶかは、患者さんのご希望に加え、生活環境や全身状態を踏まえて主治医と相談して決めていきます。
慢性腎臓病の治療・対策


慢性腎臓病の治療の基本は、原因となる病気(糖尿病・高血圧など)の管理と、腎臓への負担を減らす生活習慣です。一度低下した腎機能を元に戻すことは難しいため、「今ある腎機能をこれ以上低下させない」ことが治療の目標になります。
①減塩・血圧を下げる
慢性腎臓病では、血圧が高いと進行が速まることが分かっています。減塩によって血圧が下がり、尿蛋白も減少することが示されており(McMahon EJ, et al. J Am Soc Nephrol. 2013)、日本のガイドラインでは1日6g未満の減塩が推奨されています。
②タンパク質のとりすぎに注意
タンパク質は体に必要な栄養素ですが、摂りすぎると腎臓に負担がかかります。ガイドラインでは、腎機能が低下した方(ステージG3以降)では、体重1kgあたり0.6〜0.8g程度へのタンパク質制限が推奨されています。
③運動・肥満改善


適度な運動は、体重管理だけでなく腎臓の予後にもよい影響があるとされています。以前は「安静第一」とされていましたが、現在はCKDでも過度でない運動が推奨されています。ウォーキングなどの有酸素運動を無理のない範囲で続けましょう。肥満は腎機能低下の一因となるため、食べ過ぎや運動不足の解消を心がけることも大切です。
④禁煙・節酒


喫煙は全身の血管を傷つけます。腎臓は血管が密集した臓器のため、喫煙は腎機能低下を進める重大な要因です。今からでも禁煙することで、その後の悪化を抑えられます。いきなりやめるのが難しい方は、まず本数を減らすことから始めましょう。
⑤適切な水分摂取と薬の注意
脱水になると腎臓への血流が減り、腎機能が低下しやすくなります。特に夏場は、こまめな水分摂取を心がけましょう(ただし、むくみや心不全がある方は水分制限が必要な場合もあるため、主治医の指示に従ってください)。
また、市販の痛み止めや解熱剤に多い成分(NSAIDs、ロキソプロフェンなど)は、腎機能を低下させることがあります。腎機能が低下している方には、当院ではこうした薬を避け、比較的腎臓に負担の少ない解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)を選ぶなど配慮します。CTなどで使う造影剤も腎臓に負担となることがあるため、必要性を慎重に判断します。
当院の慢性腎臓病診療
つつじヶ丘駅前内科クリニックでは、腎臓専門医が慢性腎臓病(CKD)の診療を行っています。
慢性腎臓病は初期にはほとんど症状がなく、健診での腎機能低下や尿蛋白の指摘がきっかけで見つかることが少なくありません。しかし、同じようにeGFRが低下していても、その原因や進行のスピードは患者さんによって大きく異なります。当院では、単に検査数値を追うだけでなく、「なぜ腎機能が低下しているのか」「今後どのような経過が予想されるのか」を見極めながら診療しています。
腎臓専門医による診療(水曜・木曜の専門外来)
当院では、腎臓専門医・透析専門医として大学病院や基幹病院で数多くの腎臓病患者さんの診療に携わってきた院長に加え、水曜・木曜には腎臓を専門とする医師が外来を担当しています。慢性腎臓病の原因は、糖尿病・高血圧・糸球体腎炎・加齢などさまざまで、同じeGFRでも尿蛋白の有無や進行速度によって将来のリスクは大きく変わります。患者さん一人ひとりの背景や生活習慣まで含めて総合的に評価し、腎機能をできるだけ長く保てるよう診療します。健診結果をじっくり相談したい方や、定期的な通院を予定している方には、水曜・木曜の専門外来もおすすめです。
尿検査・血液検査


慢性腎臓病の診療では、尿検査と血液検査が非常に重要です。尿検査では尿蛋白・尿潜血を確認し、腎臓にかかる負担を評価します。血液検査ではクレアチニン・eGFRで腎機能を把握します。さらに当院では、筋肉量に左右されにくい腎機能の指標(シスタチンC)も用い、本当に対処が必要な腎機能低下かを見極めます。あわせて、腎機能と深く関わる高血圧・糖尿病・脂質異常症など、全身の状態も確認します。
よくある質問
- 慢性腎臓病は治りますか?
-
一度低下した腎機能は、元に戻らないことが多いです。そのため、今ある腎機能をこれ以上低下させないための対策が治療の中心になります。原因や尿蛋白の有無によっては、進行を大きく抑えられる場合があります。
- eGFRが少し低いだけでも、治療が必要ですか?
-
尿蛋白がなく、高血圧・糖尿病・脂質異常症などもない場合は、経過観察でよいこともあります。一方、尿蛋白がある場合は将来的に進行するリスクがあるため、生活改善や治療を始めることが望ましい場合があります。まずは原因と現在のリスクを評価することが大切です。
- どのくらいまで進むと透析が必要になりますか?
-
eGFRが15未満まで低下し、老廃物や水分の排出が追いつかず症状が強く出てきた場合で、薬物治療だけでは改善が難しいときに透析導入を検討します。ただし、そこに至る前の管理によって、時期を遅らせられる可能性があります。
まとめ
慢性腎臓病(CKD)は、初期には症状が出にくく、健康診断で気づかれることが多い病気です。腎機能の低下を放置すると、透析だけでなく、心筋梗塞・脳卒中のリスクも高まります。早期に発見して治療を始めることが、将来の健康を守る一番の方法です。
健診で「尿蛋白」「eGFR低下」「クレアチニン高値」などを指摘された方は、つつじヶ丘駅前内科クリニックにぜひ一度ご相談ください。
参考文献・出典
- Go AS, Chertow GM, Fan D, McCulloch CE, Hsu CY. Chronic kidney disease and the risks of death, cardiovascular events, and hospitalization. N Engl J Med. 2004;351(13):1296-1305.
- McMahon EJ, Bauer JD, Hawley CM, et al. A randomized trial of dietary sodium restriction in CKD. J Am Soc Nephrol. 2013;24(12):2096-2103.
- Dalrymple LS, Katz R, Kestenbaum B, et al. The risk of infection-related hospitalization with decreased kidney function. Clin J Am Soc Nephrol. 2012;7(3):409-416.
- The SPRINT Research Group. A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control. N Engl J Med. 2015;373(22):2103-2116.
- Heerspink HJL, et al. Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease (DAPA-CKD). N Engl J Med. 2020;383(15):1436-1446.
- The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease. N Engl J Med. 2023;388(2):117-127.
- Bakris GL, et al. Effect of Finerenone on CKD Outcomes in Type 2 Diabetes (FIDELIO-DKD). N Engl J Med. 2020;383(23):2219-2229.
- KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S):S117-S314.
- 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
- 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」
