高血圧と腎臓病の関係|腎臓を守るために血圧管理が大切な理由


健診などで血圧の高さを指摘されたとき、「まずは様子を見よう」と考えている間に、知らないうちに腎臓への負担が進んでしまうことがあります。腎臓内科では、こういった患者さんを多く見てきました。慢性腎臓病は高血圧とも非常に深く関わっています。
高血圧によって腎臓を傷つけ、傷ついた腎臓がさらに血圧を上げてしまう。こうした負のスパイラルを断ち切ることが、腎臓を守り、透析に至らないための第一歩になります。
今回は、高血圧と腎臓病の関係について、なぜ血圧管理が腎臓を守るために重要なのかを解説していきます。
日本人の国民病といわれる、高血圧と慢性腎臓病

日本の高血圧の患者数は、国内で約4,300万人と推定されています。これは成人の3人に1人に当たり、我が国で最も患者数が多い疾患となっています。
さらに、血圧の値が適切にコントロールできている方はわずか約1,200万人にとどまっています。残りの3,000万人は、治療を受けていても目標値に達していないか、あるいは自分が高血圧であることに気づいていないという現状があります。
つまり、高血圧を持つ方の多くが、不十分な管理の下で過ごしていると言えます。
一方で、慢性腎臓病(CKD)の患者数は日本に約1,330万人おり、成人の8人に1人が該当するとされています。これらはいずれも、日本の高齢化に伴い今後さらに増大することが予想される疾患です。
慢性腎臓病が進行して腎臓の機能が失われると、人工透析が必要になります。日本の透析患者数は約35万人と言われており、およそ350人に1人が透析を受けている計算になります。
透析治療は一般的に週3回、1日4時間程度の通院治療を必要とするため、患者さんのADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)に非常に大きな影響を及ぼすことになります。
そもそも腎臓は何をする臓器?


腎臓がどういう臓器で、どのような働きをしているのかをご説明します。
腎臓は背中側の腰の上あたりに、左右に一つずつある臓器です。あまり目立たないと思われがちですが、実はとても大切な役割を担っています。
主な働きは以下の5つです。
- 老廃物の排出
体の中で生じた老廃物を血液からろ過し、尿として体の外へ排出します。 - 水分や電解質の調整
体内の水分量を調節し、さらにナトリウムやカリウムといった電解質のバランスを整えます。 - 血圧の調整
塩分や水分量を調整するほか、血圧に関わるホルモンを調整することで、血圧を適切にコントロールします。 - 血液を作る作用
血液を作るホルモンを分泌して、骨髄に赤血球を作るよう命令を出します。 - 骨を守る働き
ビタミンDを活性化させることでカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にします。
このように、腎臓は単にろ過をして尿を作るだけの装置ではありません。血圧、貧血、そして骨にまで関わる非常に大切な臓器であることがわかります。
なぜ高血圧と腎臓病は関係するのか?
腎臓は血圧をコントロールする臓器です。体の中の塩分や水分量を調整する役割を担っており、塩分や水分量が多くなって血液量が増えると、血圧は上がります。反対に、塩分や水分を排出することによって血圧は下がります。
腎臓は「レニン」というホルモンを分泌することによって血圧の調整をしており、いわば血圧調整の司令塔なのです。
腎臓の働きが低下すると、塩分や水分をうまく排出できなくなり、体の中に余分な水分がたまりやすくなります。その結果、血液量が増え、血圧が上がりやすくなります。
さらに、腎臓はレニン・アンジオテンシン系という血圧を調整する仕組みにも関わっています。腎臓の機能が低下すると、この仕組みのバランスが崩れ、血圧が上がりやすくなることがあります。
高血圧が血管をなぜ傷つけるのか


腎臓は血管の集まりで、毛細血管が集まった「糸球体」という場所があり、そこで血液をろ過しています。この糸球体は、片方の腎臓に約100万個、両方で約200万個もあります。
高血圧が腎臓を傷つける仕組みには、主に二つの機序があります。
- 血管の動脈硬化
高い血圧が長時間続くことで、毛細血管に強い圧力がかかり、動脈硬化が進んでしまいます。血管の壁が厚く硬くなると、糸球体への血流が少なくなってしまい、ろ過する機能が低下します。これが、高血圧によって腎機能が落ちてしまう「腎硬化症」の仕組みです。 - 糸球体内圧の上昇
全身の血圧が高いと、糸球体内の圧力上昇にもつながります。すると、ろ過機能である糸球体には通常より強い負荷がかかります。過剰なろ過を繰り返すことで糸球体は疲弊し、やがて一つずつ壊れてしまいます。
生き残っている糸球体には、今まで以上の負荷がかかるため、残った糸球体にもさらに負担がかかり、腎機能低下が進みやすくなります。この状態が続くと、普段はろ過されるはずのないタンパクが尿に漏れ出し、「タンパク尿」が出るようになります。
タンパク尿が出ているということは、腎臓がだんだん疲れてきているサインです。
腎硬化症は特有の自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断でタンパク尿を確認しない限り、なかなか腎機能の低下に気づくことが難しいのが実情です。
高血圧になると腎臓の血管を傷つけ、腎臓の機能が低下します。
さらに腎臓の機能の低下があると、塩分や水分が溜まり、ホルモンが乱れます。そして血圧が上がってしまうという「負のサイクル」が生まれてしまうわけです。
なので、この負のスパイラルを断ち切るために、血圧の管理というのがとても重要になってくるわけです。
高血圧が透析につながる
高血圧が腎臓に与える影響は、透析につながることがあります。
透析を開始することになった原因を見てみると、以下の通りです:
- 第1位:糖尿病
- 第2位:慢性糸球体腎炎
- 第3位:高血圧と深く関わる「腎硬化症」
実は、この腎硬化症による透析導入は増加傾向にあります。以前は第4位や第3位でしたが、だんだんと順位が上昇しており、年によっては第2位になることもあります。
腎硬化症で透析に至る患者さんの平均年齢は高齢であることが多く、これは長期間の高血圧が徐々に血管を蝕み、腎機能を低下させてきた結果といえます。
血圧管理の重要性:腎臓を守るために
ここでは腎臓を守るために、血圧の目標値についてお話しします。
2025年に改定された「高血圧治療ガイドライン2025」では、患者さんの背景にもよりますが、血圧目標が以下のように厳しくなりました。
- 診察室血圧:130/80 mmHg未満
- 家庭血圧:125/75 mmHg未満
腎臓を守るためには、これまで以上にしっかりとした血圧管理が求められるようになっています。
しかし、動脈硬化が強い方やご高齢の方の場合、かえって血圧を下げすぎることによって、ふらつきや他の臓器への血流低下を招く恐れもあります。
そのため、一人ひとりの状態に合わせて、適切に血圧を管理していくことが大切です。
家庭血圧を測る習慣を
血圧は診察室での1回の測定よりも、ご自宅での家庭血圧の方が大事です。
正しい測定のタイミングと方法は以下の通りです:
- 朝の測定
朝起きて1時間以内に、トイレを済ませた後に測るようにしてみてください。 - 夜の測定
寝る前に測定してください。
測定の際の注意点:
(a) いずれも座って1〜2分くらい安静にしてから測るようにしましょう。
(b) 手首式よりも、上腕で測るタイプの血圧計で測るのがおすすめです。
毎日の記録は治療方針を決める上でとても大事になります。医療機関を受診する際は、血圧を記録しているメモや手帳をぜひご持参ください。
腎臓を守り、今日からできること
血圧や腎臓を守るためには、生活習慣の見直しと適切な治療の両方が必要です。今日から取り組める5つのポイントについてお話しします。
- 減塩
塩分の取り過ぎは血圧を上げ、腎臓への負担を増やします。日本人の平均塩分摂取量は1日10g前後と言われていますが、まずは目標の6gを目指してみましょう。
(a) ラーメンやうどんの汁は飲まない
(b) 漬物を食べ過ぎない
(c) 醤油やソースは「かける」より「つける」
このような工夫を積み重ねることで、目標値に近づけることができます。 - 適切な体重の維持
肥満の状態は、腎臓への負担を増やし、血圧の状態を悪化させます。ウォーキングなどの有酸素運動を週に数回、継続して行うようにしましょう。 - 禁煙・禁酒
タバコは全身の血管を傷つけ、動脈硬化やCKD(慢性腎臓病)の進行を早めます。禁煙を徹底しましょう。また、過度の飲酒も血圧を上げる原因となるため、お酒は適切な量に控えてください。 - 適切な睡眠
睡眠不足は血圧を上昇させます。特に、いびきや日中の強い眠気がある方は「睡眠時無呼吸症候群」が背景に隠れていることがあり、注意が必要です。気になる方は、当院でも検査を行っておりますのでぜひご相談ください。 - 適切な薬物治療
生活習慣の改善だけで血圧が十分に下がらない場合は、お薬による治療を行います。
(a) ARBやACE阻害薬
(b) SGLT2阻害薬
(c) カルシウム拮抗薬
(d) 利尿薬
(e) MRA
これら多種多様な薬の中から、医師が患者様一人ひとりの状態に合わせたお薬を選択します。
当院での診察の流れ
腎臓や血圧のことで受診するのは初めてで不安という方もいらっしゃると思います。当院では、おおむね以下のような流れで診療を行っております。
- 問診
現在の状況、血圧の推移、健診結果、現在服用中のお薬の状態などをお聞きします。健診結果や血圧を記録したものをご持参いただくと、診察がとてもスムーズに進みます。 - 検査
現在の状況を正確に把握するため、血液検査や尿検査を行います。 - 結果のご説明と方針のご相談
検査結果や現在の生活状況を判断した上で、生活習慣の改善、および必要に応じた薬物治療について一緒にご相談させていただきます。 - 継続的なフォローアップ
定期的に数値や生活習慣、症状を確認しながら、一緒に治療を進めていきます。
調布・三鷹エリアで腎臓を守る血圧管理を
高血圧も腎臓病も、最初はほとんど症状がありません。だからこそ、健康診断で指摘された方は早めに医師に相談することが、腎臓を守る最良の方法です。
当院は京王線「つつじヶ丘駅」前という通いやすい立地で、調布市、三鷹市、狛江市、世田谷区など、近隣にお住まいの皆様の健康をサポートしております。院長は腎臓内科の専門医であり、これまで数多くの高血圧やCKD(慢性腎臓病)の患者さんを診察してまいりました。
以下のようなお悩みをお持ちの調布・三鷹周辺の皆様は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
- 健康診断の結果について
(a) 血圧が高い、あるいは腎機能が落ちていると言われた
(b) 尿タンパクが出ていると指摘された - 現在の治療や家族歴について
(a) 血圧の薬を飲んでいるが、腎臓への影響が心配
(b) 家族に透析を受けている方や腎臓病の方がおり、自分も気になっている - 合併症の管理について
(a) 糖尿病や脂質異常症があり、腎臓への影響をまとめて診てほしい
当院では血液検査や尿検査の結果をもとに、お一人おひとりに合わせた血圧管理と腎臓保護のプランをご提案させていただきます。
「ちょっと血圧が気になる」という段階から、長くお付き合いできるかかりつけ医でありたいと考えております。お仕事帰りや、健康診断の結果を受け取ったタイミングなど、ぜひお気軽に立ち寄りいただければと思います。
腎臓は一度大きく傷つくと、元には戻りづらい臓器です。まだ症状のない今こそが、腎臓を守るための大切なタイミングです。血圧や腎臓のことで気になることがあれば、どんなことでも構いません。調布・三鷹近辺の皆様、ぜひ当院にご相談ください。
