健診で腎機能低下を指摘された方へ|受診目安と検査内容
健診で腎機能低下を指摘されても、すぐに重い病気と決まるわけではありません
結論からお伝えすると、健診で腎機能低下を指摘されても、あわてる必要はありません。一方で、腎臓の病気は初期に症状が出にくいため、指摘された数値を放置せず、一度きちんと確認することが大切です。健診は、その大切なサインに早く気づくための機会といえます。
腎臓は、体の中の余分な水分や老廃物を尿として外に出す働きをしています。働きが少しずつ低下していても、初期には自覚症状がほとんどないため、健診の血液・尿検査で初めて異常に気づく方が多くいます。
日本腎臓病協会によると、慢性腎臓病(CKD)の患者は日本に約1,330万人、成人の約8人に1人とされ、決してめずらしい状態ではありません。落ち着いて、今の腎臓の状態を確認していきましょう。
腎機能低下とは何を意味するのか
健診で腎機能を見るとき、よく確認されるのが「クレアチニン」と「eGFR」です。クレアチニンは、筋肉を使ったあとに体内でつくられる老廃物で、通常は腎臓から尿へ排出されます。腎臓の働きが落ちると体に残りやすくなり、血液検査で高めに出ることがあります。
eGFRは、クレアチニンの値・年齢・性別から計算する「腎臓の働きの目安」です。腎臓がどれくらい血液をろ過できているかを示す数値で、低いほど働きが低下していると考えます。
厚生労働省 e-ヘルスネットでは、腎臓の働きの低下や尿たんぱくなどの腎障害が3か月以上続く場合に、慢性腎臓病(CKD)と判断するとされています。多くはeGFRが60未満、または尿蛋白陽性が続くことで診断されます。
ただし、1回だけeGFRが低くても、すぐに重い腎臓病と決まるわけではありません。脱水、体格、筋肉量、薬の影響、一時的な体調などでも変動します。大切なのは、1回の結果で判断せず、尿検査や再検査を含めて総合的に確認することです。
健診結果で確認したい4つの項目
腎機能の評価では、次の4項目をあわせて見ます。下の表で見方の目安を整理します。
| 項目 | 見方の目安 |
|---|---|
| クレアチニン | 高いと腎臓のろ過する力が低下している可能性。筋肉量が多い方は高めに出ることがあります |
| eGFR | 腎臓の働きの目安。60未満でCKDの可能性を考えます |
| 尿蛋白 | 陽性が続くと、腎臓に負担がかかっているサインのことがあります |
| 尿潜血 | 尿に血液成分が混じる状態。腎臓だけでなく泌尿器の病気が関係することもあります |
特に、eGFRが短期間で下がっている場合や、尿蛋白と尿潜血の両方を指摘された場合は、確認が必要になることがあります。高齢の方や筋肉量が少ない方は、クレアチニンがそれほど高くなくても腎機能が低下していることがあるため、eGFRや尿の所見もあわせて見ます。
尿潜血だけが続く場合や、目で見て分かる血尿がある場合は、腎臓だけでなく尿管・膀胱・前立腺など泌尿器の病気が関係することもあります。一方で、尿蛋白をともなう尿潜血の場合は、腎臓内科での確認が望ましいことがあります。健診票では「±(プラスマイナス)」「1+」などの表記で示されますが、±が繰り返し出る場合や1+以上の場合は、再検査や医療機関での確認がすすめられます。
どのような場合に受診した方がよいか
結論として、次のような場合は受診をおすすめします。
- eGFRが60未満だった、または45未満だった
- 前回よりeGFRが大きく低下している
- クレアチニンが高いと言われた
- 尿蛋白が陽性だった、尿蛋白と尿潜血の両方を指摘された
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症がある
- 腎臓病の家族歴がある、むくみ・尿の泡立ち・血尿などがある
日本腎臓学会のCKD診療ガイドライン2023では、健診でeGFRが45未満の場合に医療機関への受診をすすめるとされています。なお40歳未満では、eGFR60未満で受診をすすめる目安となっています。
特に高血圧や糖尿病がある方は注意が必要です。これらは腎臓に負担をかけやすく、CKDの原因や進行に関係することがあります。ただし「腎機能低下と言われた=すぐ透析」という意味ではありません。早めに状態を確認し、血圧・血糖・脂質・尿蛋白などを管理することで、腎臓への負担を減らすことが期待できます。
また、痛み止めやサプリメントを長期間使っている方、腎臓病の家族歴がある方も、一度相談しておくと安心です。気になる症状や項目がある場合は、症状の有無にかかわらず、まずは健診結果を持って受診し、状態を確かめることをおすすめします。
腎機能低下を放置しない方がよい理由
腎臓の病気は、初期には症状が出にくいのが特徴です。軽度から中等度の低下では痛みやだるさを感じにくく、普段どおり生活できてしまうため、「症状がないから大丈夫」とそのままにしてしまう方もいます。
しかし、腎機能低下や尿蛋白が続くと、将来さらに腎臓の働きが低下する可能性があります。また、e-ヘルスネットでも、CKDがある人は脳卒中や心筋梗塞などの心血管病が起こりやすくなると示されています。腎臓と心臓・血管の健康は深く関わっているため、腎臓の状態を知ることは、将来の心血管病のリスクを下げることにもつながります。大切なのは過度に不安になることではなく、今の状態を正しく確認することです。
医療機関で行う検査
医療機関では、腎臓の状態を多角的に確認します。主な検査は次のとおりです。
- 血液検査:クレアチニン、eGFR、尿素窒素、電解質、血糖、HbA1c、脂質、尿酸などを確認します。腎臓に影響する生活習慣病がないかもあわせて調べます。
- 尿検査:尿蛋白、尿潜血、尿沈渣などを確認します。尿蛋白が陽性のときは、尿蛋白クレアチニン比でより詳しく量を調べることがあります。
- 血圧測定:高血圧は腎臓に負担をかける大きな要因です。診察室だけでなく、家庭血圧の確認が重要になることもあります。
- 腹部超音波検査:必要に応じて、腎臓の大きさや形、尿の流れ、結石や水腎症の有無などを確認します。
なお、腎臓の評価ではeGFRなどの腎機能だけでなく、蛋白尿(アルブミン尿)の程度もあわせて見ることが重視されています。痛み止めやサプリメント、脱水になりやすい生活なども腎臓に影響することがあるため、服用中の薬や生活習慣もうかがいます。
腎臓内科と泌尿器科、どちらを受診すべきか
結論として、腎機能低下・クレアチニン高値・eGFR低下・尿蛋白を指摘された場合は、腎臓内科での相談が適しています。腎臓内科では、腎臓の働き・尿蛋白・血圧・糖尿病・脂質異常症などを総合的に見て、腎臓を守るための管理を行います。
一方で、目で見て赤い尿が出る、排尿時の痛みがある、尿路結石が疑われるなどの場合は、泌尿器科での検査が必要になることがあります。尿蛋白と尿潜血の両方がある場合は、まず腎臓内科で確認するとよいケースが多くなります。
日常生活で気をつけたいこと
まず、自己判断で極端な食事制限を始める必要はありません。一般的には、次の点に気をつけるとよいでしょう。
塩分のとりすぎは血圧を上げ、腎臓に負担をかけることがあります。汁物を残す、加工食品を控えめにするなど、できるところから始めましょう。また、脱水になると一時的に数値が悪く見えることがあるため、発熱・下痢・嘔吐のあるときや夏場は注意します。
一部の痛み止めは腎臓に負担をかけることがあるため、市販薬を長く使う前に医師や薬剤師に相談しましょう。具体的な食事の制限量などは個人差が大きいので、医師や管理栄養士に相談しながら進めると安心です。
そして、腎臓を守るうえで特に大切なのが、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症の管理です。腎臓だけを見るのではなく、血圧・血糖・脂質・尿酸を全体として整えることが、腎機能低下の進行を抑えることにつながります。塩分のとりすぎや肥満、喫煙、運動不足、睡眠時無呼吸なども関係するため、できる範囲で生活習慣を見直していきましょう。
受診時に持参するとよいもの
受診のときは、次のものがあると診察がスムーズです。今回の健康診断の結果に加え、過去の健診結果、お薬手帳、家庭血圧の記録、糖尿病や高血圧で通院中の方は検査結果、市販薬やサプリメントの情報などです。
特に過去の健診結果があると、eGFRが以前から低いのか、最近になって下がったのかを確認しやすくなります。腎機能は「今回の数値」だけでなく、「時間の経過でどう変わっているか」が大切だからです。
まとめ
- 健診で腎機能低下を指摘されても、1回の結果ですぐ重い病気と決まるわけではありません。
- ただし腎臓病は初期に症状が出にくいため、eGFR低下・クレアチニン高値・尿蛋白は早めの確認が大切です。
- eGFRが60未満(健診では45未満が受診の目安、40歳未満は60未満)、尿蛋白陽性、以前より悪化、高血圧・糖尿病がある場合は再検査をおすすめします。
- CKDは脳卒中や心筋梗塞とも関連します。血圧・血糖・脂質などの管理で腎臓を守りましょう。
- 受診時は、今回と過去の健診結果・お薬手帳・家庭血圧の記録があるとスムーズです。
受診案内
健診結果の腎機能低下、クレアチニン高値、eGFR低下、尿蛋白などが気になる方は、健診結果をご持参のうえご相談ください。つつじヶ丘駅前内科クリニックでは、血液・尿検査や血圧評価、必要に応じた超音波検査を行い、腎臓の状態を確認します。
よくある質問
Q1. eGFRが低いと言われました。すぐに透析になりますか?
すぐに透析が必要という意味ではありません。eGFRの値、尿蛋白の有無、数値の変化、年齢、持病などを総合的に確認する必要があります。まずは健診結果を持って受診し、再検査を受けることをおすすめします。
Q2. クレアチニンが少し高いだけでも受診した方がよいですか?
クレアチニンは筋肉量や体格の影響を受けます。ただし、eGFRが低い、以前より悪化している、尿蛋白があるといった場合は受診をおすすめします。
Q3. 尿蛋白も指摘されています。腎臓内科でよいですか?
尿蛋白は腎臓の病気と関係することがあります。尿蛋白が続く場合や、尿蛋白と尿潜血の両方がある場合は、腎臓内科での確認が適しています。
Q4. 症状がなくても受診した方がよいですか?
腎機能低下は初期には症状が出にくいことがあります。症状がなくても、eGFR低下や尿蛋白を指摘された場合は、再検査で確認することが大切です。
Q5. 健診結果は持って行った方がよいですか?
はい。今回の結果だけでなく、過去の健診結果もあると、腎機能が以前から低いのか最近下がったのかを確認しやすくなります。
引用文献
厚生労働省 e-ヘルスネット CKD / 慢性腎臓病
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-073.html
日本腎臓学会 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023
https://cdn.jsn.or.jp/medic/guideline/pdf/guide/001-294.pdf
日本腎臓病協会 慢性腎臓病(CKD)について
https://j-ka.or.jp/ckd/
