コレステロールの薬(スタチン)は一生飲み続けるの?やめられる人・続けた方がよい人を医師が解説


健診でコレステロールの薬(スタチン)をすすめられたとき、あるいは飲み始めたあとで、多くの方がこう思われます。
「これは一生飲み続けないといけないのだろうか」 「一度始めたら、もうやめられないのでは」
薬を長く続けること自体に、抵抗を感じるのは自然なことです。この不安は、決して大げさなものではありません。
先にお伝えしたい結論があります。スタチンは「一生飲まなければならない薬」ではありません。ただし、「いつでも気軽にやめてよい薬」でもありません。続けた方がよいかどうかは、その人がどんなリスクを抱えているかによって大きく変わります。
この記事では、やめられる可能性がある人と、続けた方が安心な人の違い、そして薬をやめるとどうなるのかを、順番に整理していきます。読み終えるころには、ご自身が「どちら寄りなのか」を考える手がかりが持てるはずです。
まず知っておきたいこと:スタチンは「下げる薬」であって「治す薬」ではない
スタチンは、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を下げるお薬です。ここで大切なのは、スタチンはコレステロールが高くなる体質そのものを治しているわけではない、という点です。
薬を飲んでいる間はLDLコレステロールが下がりますが、その多くは「薬の力で下げている」状態です。そのため、薬をやめると、数週間から数か月のうちに、もとの高い値に戻っていくことが多いのです。
つまり、「薬で数値が正常になった=もう治った」ではありません。ここが、多くの方が抱く誤解のポイントです。


なぜコレステロールを下げるのか:目的は「血管の事故」を防ぐこと
そもそも、なぜLDLコレステロールを下げるのでしょうか。数値をきれいにすること自体が目的ではありません。本当の目的は、将来の心筋梗塞や脳梗塞といった「血管の事故」を減らすことです。
LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁に少しずつコレステロールがたまり、動脈硬化が進みます。これが心筋梗塞や脳梗塞の土台になります。
スタチンの効果については、世界中の大規模な臨床試験をまとめた解析があります。それによると、LDLコレステロールを1 mmol/L(約39 mg/dL)下げるごとに、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な血管の事故がおよそ2割前後(約22%)減り、この効果は治療を続けている間、長期にわたって持続すると報告されています。全死亡のリスクも約1割低下することが示されています。
ここで大事なのは、この効果は「飲み続けている間」得られるものだということです。数値が下がったからと薬をやめれば、値は戻り、守りも薄れていきます。スタチンが「続けてこそ意味がある薬」と言われるのはこのためです。


やめられる人・続けた方がよい人を分ける最大のポイント
では、誰もが一生続けなければならないかというと、そうではありません。分かれ目になるのは、「一次予防」か「二次予防」かという考え方です。少し聞き慣れない言葉かもしれませんが、とても大切なので説明します。


続けた方が安心な人(二次予防・高リスクの人)
すでに心筋梗塞や狭心症、動脈硬化による脳梗塞を起こしたことがある方は、「二次予防」に当たります。この場合、もう一度同じ事故を起こすリスクが高いため、薬を続けて再発を防ぐことが基本の考え方になります。
また、まだ発作を起こしていなくても、次のような方は続けた方が安心とされることが多いです。
- 家族性高コレステロール血症(遺伝的にLDLが非常に高くなる体質)の方
- 糖尿病、慢性腎臓病、高血圧など、複数のリスクを併せ持つ方
- 喫煙している方や、ご家族に若くして心筋梗塞・脳梗塞を起こした方がいる場合
こうした方は、数値が薬で落ち着いていても、それは「守れている」状態です。自己判断でやめてしまうと、守りが外れてしまいます。
日本のガイドラインでは、こうした方のLDLコレステロールの目標値は、心筋梗塞や脳梗塞の既往がある場合は100 mg/dL未満、さらに急性冠症候群・家族性高コレステロール血症・糖尿病などを併せ持つ場合は70 mg/dL未満と、より厳しく設定されています。
やめられる可能性がある人(一次予防・低リスクの人)
一方で、まだ血管の事故を起こしておらず(一次予防)、他の大きなリスクも少ない方の場合は、事情が変わります。
生活習慣の改善(食事、運動、減量、禁煙など)がうまくいき、LDLコレステロールが安定して落ち着いた場合には、医師と相談のうえで薬を減らす、あるいは中止して様子を見る、という選択肢が出てくることがあります。「一時的に薬で数値を整え、その後は生活習慣で維持する」というパターンです。
ただし、これは「誰でもやめられる」という意味ではありません。中止できるかどうかは、数値だけでなく、年齢・他の病気・家族歴などを合わせて総合的に判断します。
「やめたい」と思ったときにやってはいけないこと
一番避けていただきたいのは、自己判断で急にやめてしまうことです。
前述の通り、スタチンをやめるとLDLコレステロールは多くの場合もとに戻ります。とくに二次予防や高リスクの方が黙って中止すると、気づかないうちに血管を守る力が弱まり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まってしまいます。値が上がっても自覚症状はほとんど出ないため、「調子は変わらないから大丈夫」と感じてしまうのが、かえって怖いところです。
もし薬をやめたい・減らしたいと思ったら、次のように主治医に相談してみてください。
「薬をやめたい気持ちがあります。一度中止して採血で必要性を確認することはできますか」
このように伝えていただければ、医師は数値・リスク・薬の目的を確認したうえで、中止してよいか、いつ再検査するか、代わりの方法はあるか、を一緒に考えることができます。
「副作用が心配でやめたい」という方へ
「一生」という不安の背景に、副作用への心配がある方も少なくありません。
スタチンは長年、世界中で使われてきた、エビデンスの豊富な薬です。比較的多い副作用は筋肉の痛みやだるさで、多くは軽度です。重い筋肉の障害はまれで、肝機能への影響も、現在よく使われる用量では深刻なものは多くありません。ごくわずかに血糖値へ影響することもありますが、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐ利益の方が上回ると考えられています。
大切なのは、副作用が気になるからといって黙ってやめるのではなく、医師に伝えることです。用量を調整したり、別の種類のスタチンに変更したり、合わない場合はエゼチミブなど別の薬に切り替えたりと、対応できる選択肢があります。
受診を急いだ方がよいサイン
コレステロールそのもので急に体調が悪くなることは通常ありません。ただし、動脈硬化が進んだ結果として、次のような症状が出た場合は、緊急の対応が必要です。
- 突然の激しい胸の痛み・締めつけられる感じ(数分以上続く)
- 片側の手足のしびれ・力が入らない、ろれつが回らない、言葉が出ない
- 突然の激しい頭痛、片目が見えにくい・視野が欠ける
これらは心筋梗塞や脳梗塞のサインである可能性があります。この場合は当院ではなく、ためらわず救急(119番)を利用してください。
また、スタチンを飲んでいて、手足や全身の筋肉に強い痛みが出て、尿が茶色っぽくなった場合は、まれですが筋肉の障害の可能性があるため、早めに医療機関へご相談ください。
医療機関では何を調べるか
「続けるべきか、やめてよいか」を判断するために、医療機関では主に次のようなことを確認します。
- 問診:これまでの病歴(心筋梗塞・脳梗塞の既往など)、家族歴、喫煙、生活習慣、飲んでいる薬
- 血液検査:LDL・HDLコレステロール、中性脂肪、血糖・HbA1c、肝機能、腎機能など
- 血圧測定:高血圧が併存していないか
- 心電図:心臓の状態の確認
- 超音波(エコー)検査:頸動脈などの動脈硬化の程度を確認
これらを組み合わせて、「その人がどのくらいのリスクを抱えているか」を評価し、薬の必要性を判断します。
つつじヶ丘駅前内科クリニックでできること


当院は東京都調布市の脂質異常症を積極的に診察しているクリニックです。コレステロールの薬について「続けるべきか」「やめられるか」を相談したい方に、次のような対応ができます。
- 脂質異常症(高コレステロール・高中性脂肪)の診療
- 血液検査によるLDL・中性脂肪・肝機能・腎機能・血糖の確認
- 血圧測定、心電図検査、超音波検査
- 高血圧・糖尿病・慢性腎臓病など、併存するリスクを含めた総合的な評価
- 生活習慣(食事・運動・減量・禁煙)の相談
- 健診で「コレステロールが高い」と指摘された結果の相談
- 薬を減らす・中止する場合の、採血による再評価のご相談
「一度やめて数値を確認してみたい」というご相談も、リスクを確認しながら安全な手順を一緒に考えます。健診結果をお持ちの場合は、ぜひご持参ください。ご予約はLINE・WEB・電話から可能です(予約優先制)。
当院で対応できない場合
以下については当院では実施していません。必要と判断した場合は、連携する専門医療機関をご紹介します。
- 冠動脈CTや心臓MRIなどの精密な画像検査
- 心臓カテーテル検査、ステント治療などの専門的治療
- 家族性高コレステロール血症の確定を目的とした遺伝学的検査
- 入院が必要な精密検査・治療
「専門的な検査が必要かどうか」の判断や、その後の橋渡しは当院で行えますので、まずはご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. スタチンは本当に一生飲み続けるのですか? 一律に「一生」と決まっているわけではありません。心筋梗塞・脳梗塞の既往がある方や高リスクの方は長く続けることが基本ですが、リスクが低く生活習慣の改善がうまくいった方は、医師と相談のうえで減量・中止を検討できる場合があります。
Q2. 数値が正常になったので、もうやめてもいいですか? 数値が下がっているのは、多くの場合「薬で下げている」ためです。やめると戻ることが多いので、自己判断での中止はおすすめしません。やめられるかどうかは、採血とリスク評価を行ったうえで判断します。
Q3. 勝手にやめると、どうなりますか? とくに高リスクの方では、LDLコレステロールが戻り、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる可能性があります。値が上がっても自覚症状はほとんど出ないため、危険に気づきにくいのが問題です。
Q4. 副作用が心配です。やめた方がいいですか? まずは主治医にご相談ください。用量の調整、別のスタチンへの変更、他の薬への切り替えなど、対応できる選択肢があります。黙って中止する前に、一度ご相談いただく方が安全です。
Q5. 薬を飲めば、食事や運動はしなくてよいですか? いいえ。生活習慣の改善は、薬を減らせる可能性を高め、他の病気の予防にもつながります。薬と生活習慣は「どちらか」ではなく、両輪で考えるのが基本です。
Q6. 若いのにコレステロールが高いと言われました。将来ずっと薬ですか? 若くしてLDLが非常に高い場合、家族性高コレステロール血症などの体質が背景にあることがあります。この場合は早めの管理が大切です。まずは一度、詳しく調べることをおすすめします。
まとめ
- スタチンは「一生の薬」と決まっているわけではありませんが、「いつでも気軽にやめてよい薬」でもありません。
- 続けた方がよいかどうかは、一次予防か二次予防か、他にリスクがあるかで大きく変わります。
- 心筋梗塞・脳梗塞の既往がある方や高リスクの方は、続けることで再発を防げるため、長期継続が基本です。
- リスクが低く、生活習慣の改善がうまくいった方は、医師と相談のうえで減量・中止を検討できる場合があります。
- スタチンは「薬で下げている」ため、やめると数値は戻ることが多く、自己判断での中止は避けてください。
- やめたい・減らしたいときは、我慢せず主治医に相談を。当院でも、採血とリスク評価をもとに一緒に考えます。
過度に不安になる必要はありません。ただし、「自分は続けるべき側か、やめられる側か」を確認することには意味があります。健診結果やお薬手帳をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 2022年. https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/
- Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet. 2010;376(9753):1670-1681. DOI: 10.1016/S0140-6736(10)61350-5 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21067804/
- Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration. The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. Lancet. 2012;380(9841):581-590. DOI: 10.1016/S0140-6736(12)60367-5 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22607822/
