血圧を下げる食べ物とは?医師が理由についても解説
ここでは血圧を下げる食べものについて、なるべくわかりやすく、理由も含めて解説していきます。
血圧を下げる食べ物:①魚(特に青魚)
青魚に含まれるオメガ3脂肪酸(EPA、DHA)という成分が、血圧を下げる効果があることがわかっています。
① EPA・DHAによる血管拡張作用
青魚に含まれる EPAやDHA は、血管内皮の状態を良好に保ち、血管を広げる作用(血管拡張作用)を持っています。
青魚は、血管内皮にある細胞から一酸化窒素(NO)を多く作り出すことによって、血管が広がり、血圧が低下します。
② 炎症抑制と動脈硬化予防
高血圧症の方は、体が慢性的に炎症を起こし、血管も硬くなっている傾向があります。EPA・DHAにはそれを抑える抗炎症作用を持っています。
青魚は、炎症反応を促してしまう伝達物質(炎症性サイトカイン)を抑えることによって、血管の柔らかさを保ち、血圧が下がりやすくなるという効果があります。
実際に青魚を食べる量
研究でも、EPAとDHAを1日2〜3g食べると、血圧が3〜4mmHg程度低下したと報告されています(Liu X, et al. JAMA Intern Med. 2022;182(6):586-594.)。
しかし、実際にEPAとDHAを1日2〜3gというのは、わかりにくいですよね。
目安をまとめましたので、参考にしてみてください。
・さんま 1尾(100〜120g)
・いわし 1尾(100g)
・さば 1.5切れ(150g)
・あじ 2切れ(150〜180g)
週2〜3回程度、魚料理を取り入れていただき、料理が面倒な時には、さば缶でもいいのでぜひお食事に取り入れてみてください。
血圧を下げる食べ物:②トマト
トマトは、リコピンという赤い色素が入っており、このリコピンがとても良い効果を表します。
身体は、ストレスや紫外線によって、活性酸素が発生し、この活性酸素が多いと、細胞や血管を傷つけてしまいます。その結果、動脈硬化が進んでしまいます。そこで、トマトに含まれているリコピンを摂取すると、この活性酸素を抑えることができ、身体の老化を防いでくれます。
ちなみに、加熱をしたほうがリコピンを吸収する効果が上がるため、ぜひ加熱したトマト料理がおすすめです。
トマトジュースや缶詰でもよいですが、塩分が多いものや糖分が入っているものもあるので、可能ならば食塩が無添加のものを選びましょう。
カリウムが豊富
また、トマトにはが豊富に含まれています。カリウムは塩分を尿として身体の外に出してくれるため、血管内の水分がなくなりやすくなり、血圧を下げることができます。
血圧を下げる食べ物:③キウイ
キウイには血圧を下げる効果が証明されており、カリウム・ポリフェノール・ビタミンC・食物繊維といった成分がそのメカニズムに関係しています。
① カリウムがナトリウムの排出を促進する
カリウムによって体内の余分なナトリウム(塩分)を排出することによって、塩分バランスが整い、血管の緊張がやわらぎ、血圧を下げる作用があります。
しかし、カリウムは腎機能が低下している人には、カリウムが体の中に溜まりやすく、致死的な不整脈を起こす可能性もあるので、腎機能が低下している人は控えましょう。
② ポリフェノールが血管を保護
キウイに多く含まれるポリフェノールは、血管の慢性的な炎症を抑え、一酸化炭素(NO)を分泌させることによって、血管を拡張させる働きがあります。血管が拡張されると、血圧は下がる傾向になります。
③ ビタミンCによる抗酸化作用
キウイは、ビタミンCが豊富に含まれています。ビタミンCは、活性酸素を取り除くことで、血管の状態を良好にし、血管が柔らかくなります。そのすると血管が柔らかいため、圧がかかりにくくなり、血圧は下がりやすくなります。
論文では、高血圧患者に1日3個のキウイを8週間摂取させたところ、収縮期血圧が3.6 mmHg、拡張期血圧が2.3 mmHg低下しました。これは、抗酸化作用と血管拡張作用が関係していました。(Svilaas A, et al. Blood Pressure. 2009.)
個人的には、毎日3個のキウイは食べれないですが・・・
血圧を下げる食べ物:④ナッツ
ナッツには、マグネシウムや不飽和脂肪酸が豊富であるため、血管を拡張し、血圧を安定させる効果があります。
① マグネシウム・カリウムによる血管拡張作用
ナッツにはマグネシウムとカリウムが含まれていることによって血圧を下げます。マグネシウムは血管を柔らかくさせ、血管を広げる効果があります。また、カリウムはナトリウム(塩分)を身体の外に出すことによって、血管内の血流量がへるため、高血圧を抑えます。
② 不飽和脂肪酸による血管内皮機能の改善
ナッツは不飽和脂肪酸を多く含み、 血管のしなやかさを保つ作用があります。
ナッツを1日40〜60g摂取すると、平均で収縮期血圧が1.6mmHg、拡張期が0.8mmHg低下したという論文結果もあります。(Jayedi A, et al. BMJ Nutrition, Prevention & Health. 2021;4:e000251.)
しかし、ナッツはカロリーが高いため、食べすぎるとカロリーオーバーになる可能性あるため、ひとつかみ位の量がおすすめです。
血圧を下げる食べもの:⑤低脂肪乳製品
低脂肪乳製品とは、低脂肪乳牛乳・低脂肪ヨーグルトなどです。
研究でも、乳製品・特にヨーグルトにて、高血圧の発症リスクが低下することが分かっています(J Hypertens. 2018 Aug;36(8):1671-1679.)
血圧を下げる理由は、カルシウムが豊富なこと、ホルモンによる作用です。
①カルシウムが豊富
乳製品には、カルシウムが豊富に含まれています。このカルシウムが、血管が収縮することを抑え、血管をひろげる作用を発揮します。その結果、血管内の圧力すなわち、血圧が上がりにくくなる効果があります。
また、カルシウムは腎臓においてのナトリウム(塩分)が再吸収されるのを防いでくれるため、塩分を外に出して、体内に入れることを防ぐ効果もあるため、血圧の上昇を防いでくれます。
②ホルモンを阻害
ラクトトリペプチドという成分が乳製品には含まれており、このラクトトリペプチドは、血圧を上昇させるホルモン(ACE)を作らせないようにする作用があることが分かっています。このACEを阻害するという作用機序は、処方薬でも使われており、ACE阻害薬として現在も降圧薬として使われており同じ原理です。
●なぜ低脂肪乳なのか?
普通の牛乳には飽和脂肪酸が含まれており、この飽和脂肪酸が多いと悪玉コレステロールが増えることが分かっています。悪玉コレステロールは、動脈硬化を進行させてしまう作用があるため、血圧を下げるためには逆効果となってしまいます。
また、低脂肪乳製品でも上記の、カルシウムや、血圧を上昇させるホルモンを阻害する効果は残っています。
そのため、通常の乳製品ではなく、低脂肪乳製品が推奨されます。