血糖を下げる食べ物とは?医師が理由も解説
血糖を下げる食べ物を知ることは、糖尿病やインスリン抵抗性の予防・改善に非常に重要です。血糖を下げる(あるいは急激に上げにくくする)食べ物について、解説していきます。
血糖を下げる食べ物:①ブロッコリー
ブロッコリーに含まれる「スルフォラファン」という物質があります。このスルフォラファンが血糖を下げる効果を持っています。理由は3つあります。

ブロッコリーの血糖を下げる作用:①肝臓にて、糖が作られることを抑える
肝臓は、糖を作り出す臓器です。この肝臓での糖を作り出す働きを、ブロッコリーのスルフォラファンは抑えることができるのため、血糖値が下がりやすくなります。
ブロッコリーの血糖を下げる作用:②インスリンの効き目を高める
肝臓は糖を作り出す臓器ですが、糖が過剰の場合は、糖を血管から肝臓の中に取り込み、血糖を取り除く効果も持っています。この、肝臓に糖を取り込む作業に必要なのがインスリンです。ブロッコリーのスルフォラファンはこのインスリンをよく効果が出るように働くため、多くの糖分を肝臓に取り込み、血管内の糖分を除去できるため、血糖が下がりやすくなります。
このブロッコリーのスルフォラファンが2型糖尿病患者の空腹時血糖を改善したという論文があります。(Sci Transl Med. 2017)
この論文では、ブロッコリー100gを一日あたり摂取した人は、血糖が下がっていました。
高温の調理は注意
このブロッコリーのスルフォラファンは、70℃以上の高温では壊れてしまうため、高温の調理はやめましょう。蒸すことや、軽く茹でる程度にしましょう。また、生のブロッコリーでも、もちろんOKです。
血糖を下げる食べ物:②ナッツ
ナッツは、不飽和脂肪酸、マグネシウム、食物繊維が豊富です。血糖値の急な上昇を抑え、満足感も得られるため、どうしても間食をしたい場合にはおすすめです。

不飽和脂肪酸によってインスリンの効果を良くなる
不飽和脂肪酸が、ナッツには含まれています。この不飽和脂肪酸というのは、インスリンの働きをよくするため、血糖が下がりやすくなります。
マグネシウムが豊富
マグネシウムがナッツには含まれており、マグネシウムは、インスリンの働きを良くします。マグネシウムがあることによりインスリンが効率的に働き、血糖を下げてくれます。
食物繊維が豊富
食物繊維がナッツには含まれているため、ナッツを摂取することによって、他の食物の体内への吸収をゆっくりしてくれます。ゆっくり食物が吸収されると、他の食物を食べる前に満腹になりやすく、過食を抑えることができます。また、ゆっくり吸収されるため、血糖の急に上昇することも防いでくれます。
論文でも、ナッツ(アーモンド)摂取により食後の血糖とインスリンの上昇が有意に抑制されています。(Jenkins DJ, et al. Metabolism. 2002.)
【ポイント】
ただし、ナッツ類はカロリーが高いのですが適切な量に抑えれば、血糖上昇よりも抑える効果の方が高いです。目安としては、1日20g程度にしましょう。片手で一掴み程度と覚えてください。
血糖を下げる食べ物:③酢(特に穀物酢やリンゴ酢)
お酢は、食物の動きをゆっくりにするため、血糖が上がりにくくなります。
胃の動きを抑える
酢に含まれる酢酸が、胃の動きを抑える事によって、食物が胃から腸へ移動するスピードがゆっくりになります。その結果、腸での糖分の吸収もゆっくりになるため、血糖値が急に上がることを抑えてくれます。
炭水化物の分解を遅くする
ご飯やパンなどの炭水化物は、体内で分解され糖分になります。その分解が早くされると、糖分の吸収も早くなり血糖が上がりやすくなります。しかし、酢に含まれる酵素によって、炭水化物の分解を遅くしてくれるため、血糖が急に上がることを抑えてくれます。
食事と一緒に酢を摂取した被験者は、血糖値の上昇が有意に抑制された研究結果もあります。(Johnston CS, et al. Diabetes Care. 2004.)
【ポイント】
すなわち、空腹時にお酢を飲むのではなく、食事と一緒に摂取するのがおすすめです。
ただし、酢の飲み過ぎは、胃を傷つける可能性もあるため、入れすぎ注意です。
血糖を下げる食べ物:④玄米、全粒粉、大麦
玄米・全粒粉・大麦は、よく売られている白米・小麦粉に比べて、血糖が上がりにくいです。
マグネシウムが豊富
マグネシウムが玄米・全粒粉・大麦には、多く含まれています。マグネシウムは、インスリンの効果をより高めてくれるため、血糖が血管から肝臓に取り込まれやすくなるため、血糖(血管内の糖分)が下がりやすくなります。
食物繊維が豊富
玄米・全粒粉・大麦は、食物繊維が豊富であり、白米や小麦粉に比べて、3倍以上の食物繊維が含まれています。さらに可溶性食物繊維が豊富であり、食物を大腸や小腸にて、ゲル状にします。食物がゲル状になると、消化がゆっくりになると糖分の吸収もゆっくりになり、血糖の上昇がゆっくりになるため、食後の血糖値が急上昇することを防いでくれます。
血糖を下げる食べ物:⑤ブルーベリー
ブルベリーには抗酸化作用と、インスリンの効果を強める効果があります。
慢性的な炎症を抑える
身体は、ストレスや睡眠不足、過剰な糖分や脂質のとりすぎによって、慢性的に炎症を起こしています。この慢性的な炎症は、インスリンの効果を効きにくくしてしまうため、血糖が上がりやすい体質を作ってしまいます。
そこで、ブルーベリーに含まれるアントシアニンは、慢性的な炎症を抑えるため、インスリンがうまく効くようになり血糖が下がりやすい体質を作ってくれます。
食物繊維が豊富
ブルーベリーには、食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維は糖分が身体に取り込まれるのをゆっくりにしてくれるため、血糖の上昇を穏やかにします。
ブルーベリーを食べる時のポイント
ブルーベリーは、血糖を下げる作用がありますが、ジャムは砂糖が入っているため逆効果です。生で食べるか、冷凍のブルーベリーを食べましょう。
食べ方の工夫も重要
野菜→たんぱく質→炭水化物の順で食べる(ベジファースト)
最初に、野菜を食べることで、野菜に豊富に含まれる食物繊維が胃の中でゲル状になり、そのゲルが小腸での糖の吸収を遅らせてくれます。その結果、炭水化物がすぐに吸収されず、血糖値の急上昇(血糖スパイク)を防いでくれます。
次にたんぱく質を食べると、たんぱく質由来のアミノ酸が刺激になり、少量のインスリンが分泌されます。これにより、糖質が入ってきたときに血糖を処理できる準備が整い、糖分による血糖値の急上昇が防がれるわけです。
また、食物繊維やたんぱく質は、消化に時間がかかるため、胃から小腸への移動が遅くなります。そのため、その後に入ってきた炭水化物(糖質)もゆっくりと小腸に届くため、血糖が上がりにくくなります。
噛む回数を増やす
●食後血糖の上昇をゆるやかにする
よく噛むことで、食べ物が細かく分解されて胃にゆっくり送られるため、消化・吸収が遅くなります。胃の内容物の排出が遅くなり、糖質の吸収スピードが下がるため、食後の急激な血糖上昇を防ぎます。
●インクレチン(GLP-1など)の分泌が増える
よく噛むと、腸から分泌されるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンの分泌が増えます。このGLP-1は、胃の動きをゆっくりにし、食欲を抑え、インスリン分泌を促す、胃の動きをゆっくりにする働きがあります。そのため、GLP-1が多く出ると、血糖の上昇を抑えます。つまり、噛む回数を増やると、GLP-1の血中濃度が上昇し、血糖上昇が抑えられます。
● 食欲のコントロールがしやすくなる
よく噛むと満腹中枢が刺激されやすくなるため、過食を防ぐことができ、結果的に血糖が上がりにくくなります。満腹感は、食べてから20分ほど遅れて脳に届くため、早食いだと食べ過ぎになりやすいです。